Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#734 ダンディーの江戸版~「八丁堀同心殺人事件 耳袋秘帖」

『八丁堀同心殺人事件 耳袋秘帖』風野真知雄 著

有楽町。

 

GWも残るところ後少し。そろそろ戻る準備を進めなくてはと思うが、なかなか体が動かない。出発した日の羽田空港はものすごかった。人人人で、あんなに人が多い羽田は初めてだったかも。きっと帰りも混雑するんだろうなあと荷物をいかにコンパクトにまとめるかで頭を悩ませているところだ。

 

さて、新しく読み始めているシリーズもの。

 

著者のシリーズものはこちらが3つ目なのだが、初回に読んだ「味見方同心」の軽快なテンポというか、いたるところに散りばめられているユーモアに引き込まれてすっかり大ファンになった。そして私の想像する著者の姿がまさに本シリーズの主人公で、また別の意味でわくわくしながら読んでいる。

 

南町奉行根岸肥前守は一を聞けば十を見通せる。決して裕福な出自でもなく、武士の階級社会の中で実力で這い上がってきた。若い頃からその賢さは片鱗を見せていたようだが、奉行という事件の謎を解く役職は根岸にぴったりの仕事だろう。しかし奉行となったのが還暦を過ぎており、根岸家の部下である坂巻と、南町から剣の腕があり心根もまっすぐな栗田が根岸を支えている。

 

その根岸には「耳袋」という実際にあった事件を綴った帳面がある。不思議な話、面白い話、怖い話、全て根岸が耳にした話ばかりをまとめた「耳袋」は今や写本まで作られて武家の間を回っているという。

 

2巻目では根岸の今の種明かしともいうべき幼少期の話が少し、そして根岸を狙ったかと思われる同心殺しの謎解きが収められている。根岸は奉行となる前は勘定方に居た。根岸本人はどの派に属しているという考えはない。しかし松平定信と交流があり、時の老中であった田沼意次が去った今でも田沼派からの追っ手がやってくる。坂巻と栗田も南町に忍ぶ田沼派を抑え、根岸の傍で警護にあたっていた。

 

同心を襲うというのは相当の技を持つもののはずである。さらには栗田は南町一の剣豪であり、坂巻は二刀流でこちらも力量は確かだ。その二人が剣を交え「強者」と判断した敵を追い続けるも、なかなか姿が見えてこない。根岸はすでに目を付けていたのだがお縄をかけることはできずにいた。予想外の人物の姿が浮かぶ。

 

とにかくお奉行がかっこいい。ユーモアたっぷり、頭の回転も速く、一瞬にして真実を見抜く。きっとダンディーでかっこいい人なんだろうなあ。きっと着物もおしゃれに着こなして、素敵なおじさま風なんだろうなあ、と妄想を膨らませているところ。

 

話変わって南町奉行所の跡地は今の有楽町だ。JR有楽町の駅を出てすぐ目の前の広場のあたりとなる。一方で北町奉行所は東京駅付近。大丸側を出て少しの所だ。歩けば10分程度の距離で私もここはよく歩く場所なのだが、確かに根岸のイメージはどちらかと言えば有楽町風でより親近感が湧く。

 

川の中の飛び石をぽんぽんと飛ぶような感じでストーリーが進んでいくし、謎解きがこれまた秀逸。