#728 続編希望!!!~「成瀬は天下を取りにいく」
『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈 著
膳所。
普段あまりテレビを見ることはないのだが、出張先では時報替わりにテレビをつけていることが多い。それぞれのローカルな話題も楽しいし、演出の仕方も地方色があり楽しみだったりもする。
先月末、今思えば日帰りでもよかったかなーな出張があった。いつもより早めに宿所に入り、テレビをつけた。あれこれチャンネルを回し、お、5時夢だ!しかも木曜だ!と嬉しくなった。木曜日は一番のお気に入りなので、早速真剣に視聴する。月末はエンタメ番付というものがある。そこで中瀬さんがプッシュしていたのが本書で、Kindle版が出たことを期に購入することにした。
主人公の成瀬あかりは滋賀県は大津市に住んでいる。大津市は琵琶湖の南西に位置しており、京都からも割と近い。成瀬の家はそんな大津の膳所にある。膳所は「ぜぜ」と読む。いわゆる天才気質なんだろうと思うが、とにかく何でもできるし達観している。まるで将棋の藤井棋士のように若いのにすでに人生を悟ったかのような風格と落ち着きがある、それが成瀬だ。
成瀬は琵琶湖が見渡せる膳所に生まれ育ち、今中学生活を満喫している。2年の夏、成瀬はその夏を西武百貨店大津店に賭けることから物語はスタートする。
幼少の頃から軍を抜いて何でもできてしまう成瀬は、中学に上がる頃には多感なお年頃のせいも大いに考えられるが、ちょっと周りから距離を置かれていた。いじめとかではなく、とにかく変わっていたからだ。もうその段階ですでに成瀬ワールドは確立されており、周りの意見など全く気にならない我が道を行くスタイルを築いている。
そんな成瀬には幼馴染がいた。同じアパートに住む島崎だ。そう、名字で呼び合うのもなんとも成瀬らしいというか、性を感じさせない少年っぽさも成瀬の特徴だ。島崎は小さい頃から成瀬を観察しているので成瀬のおかしなところも気にならない。周りが成瀬を遠巻きに見ている時は静観し、かといって成瀬を無視することもない。小さい頃から成瀬はそこに居て、ずっと変わったことばかりしていたからだ。
そんな成瀬が西武大津店に夏を賭けた。これだけでは何のことやらだが、簡単に言うと閉店が決定した西武大津店への思いを感謝と共に記憶する活動を始めた、ということで、ここに島崎までもが巻き込まれて大津の夏に色を添える。
これは滋賀の人が読んだらあるあるがいっぱいでより一層楽しい本だと思うのだが、大津愛が強すぎる成瀬の行動を読むだけでも読者は「大津」の情報がどんどんとインプットされ、なんだか行ってみたい気になるのが不思議だ。
個人的に大津には1度行ったことがある。琵琶湖を見渡しおいしいパンを食べた。あそこに成瀬がいたのか!と思うと、なぜか「絶対いそう」な気持ちになるような不思議な町だ。なんだかワクワクふわふわするような、大阪や京都とはまた違った関西で、いやでもちょっと東海入ってるかな?な面もあったりとそのミックス感が成瀬にぴったり。
ひとまず、今の段階で成瀬は小さな成功を納めたり、実験結果を得たりはしているが天下を取るには至っていない。島崎とM-1に出ると作った「ゼゼカラ」というお笑いコンビもこれからどうなるのか見どころ満載で、これは絶対に続編出るな、いや続編書いて欲しい。と期待が止まらない。
成瀬といい、島崎といい、女子らしさがまるでなくさらっとしてるけど濃厚な青春を満喫している。続編が出たら、絶対に大津まで行きそこで読むぞ!と願をかけておこう。