Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#642 例年より暖かい気がしますね~「雪まろげ」

『雪まろげ』宇江佐真理 著

古手屋へ届けられた赤子。

 

気が付くとAmazonで最大50%還元のイベントが開催されていた。15日までとのことで慌ててギフトカードを購入して23年上半期に読むべき本を揃えようと思ったものの、ギフトカードが購入できない!なぜかよくわからないエラーが出続け、購入ページへたどり着けない状態だ。

 

とりあえず、今週来週と出張続きの日々に入るので、まずは手持ちのものを読んでしまおうと読みたい気持ちを宥める。12月にもなったことだし、タイトルが冬っぽい作品を読んでみることにした。2020年代に入り、ますます気候変動の影響を感じる日々となった。冬らしい冬が来たような来ないような。東京はますます温かいクリスマスとなりそうだ。

 

まず、読み始めてから気が付いたのだが、もしかしてこれは2巻ものの続編の後半かもしれない、そして検索して確信に変わった。というのも、Kindleの中を見ると主人公の名前がタイトルとなっている作品があったからだ。思えば時代小説で読み順間違るのはこれで何度目か。これもすべてKindle内に書籍をため込んでいるからに違いない。ああ、ちゃんとパソコンやKindleの中も片付けなくちゃー。

 

さて、主人公は喜十という古手屋を営む男だ。美人の妻と共に古手屋を営んで数年が経つ。その人柄を認めてか立ち寄る岡っ引きや同心もいる。

 

しかし物語のスタートは主人公の周辺ではなく、外の世界から始まっている。ある日のこと、喜十の住む浅草にしじみ売りがやって来た。よく見るとまだ若く、粗末な身なりであった。喜十おそらく家計を助けるためであろう、少年は必至にしじみを売り歩く。「業平しじみ」と声をかけながら、少し朝餉には出遅れた時間にも町中で行商を続けていた。

 

そこで声をかけたのは喜十の妻だ。業平しじみは身がしっかりしていると有名で、味は大変に滋味がある。少年の手持ちを全て購入し、少年は安心して帰路についた。その少年の名を新太と言う。物語はこの新太一家の事情から始まった。

 

新太には姉が一人、弟が二人、妹が二人いた。姉は奉公に出て家族を支え、新太は業平橋のたもとで毎朝日の出前から川へ出てしじみを取り、売りに出る。新太の家は貧しい。父はある日疲れたと横になったまま亡くなってしまった。母は貝のむき身を料理やへ卸す仕事をしているが、こちらも稼ぎは少なく子供6人を育てるには不十分であった。

 

その母は貧乏生活に嫌気がさしたのか、生まれたばかりの末の弟を手放そうとする。どこかに養子に出せと毎日新太を責めていた。弟を家から出すことを母以外はみな反対していたが、母はついには「お前の父の子ではない」とまで言い出す始末だ。母はどんどんと生活を崩しつつあり、新太は弟の幸せを願いだれか良い人の下へ託そうと弟を背負い家を出た。

 

新太にはある思いがあった。いつかしじみを売ったあの奥様ならきっと弟を幸せにしてくれるだろう。それが喜十の妻である。新太は弟を古手屋の前に置く。弟の幸せを祈ってのことだった。

 

弟、捨吉は喜十の息子となった。そこからこのお話が大きく変わる。新太の一家は崩れ尽くした母が姉を吉原に売って遊ぶ金を作り、今後他の弟妹もどうなるかわからない。新太へのしかかる苦痛。捨吉が愛されて育てられていることに安心を感じるも、捨吉がすくすくと大きくなる裏には悲しい事情が色濃く残されている。人情と粋の世界が広がる作品。

 

出てくる登場人物の説明があっさり簡単なので、何かおかしいなと思っていたら、やっぱり続編を読んでいたようだ。近いうちに1巻目を読まなくては。