Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#714 心でつながる縁~「居眠り磐音 33~35」

『居眠り磐音 33~35』佐伯泰英 著

身を隠す。

 

この頃続けて読んでいる作品。もう2/3まで読んだのね。

 

30巻目を過ぎて、急に物事が大きく動く。磐音の心を支える温かい人々たちが次々と磐音の前から消えて行く。ものすごく大きな喪失感がに突き落とされるのが33巻、34巻は悲しみを纏い、35巻は一条の光が差し始める前触れというところだろうか。

 

磐音には父が4人いる。生みの親である関前藩長老 坂崎正睦、尚武館を継ぐために養子に入った佐々木家の養父 佐々木玲圓、妻おこんの生みの親であり磐音の深川の長屋の大家であった 金兵衛。そして武家に嫁ぐにあたり、おこんが養女に入った速水家の主 速水左近。みなが磐音を温かく見守り、何よりも信頼し、深い愛情を持っている。

 

養父の玲圓とは剣の道を志すという共通点のほか、佐々木家の隠された意図である「徳川家をお守りする」という任務にあたり、次代の家基をどうにか将軍にと思う気持ちも共にあった。磐音が尚武館を継ぐ理由は、佐々木家を存続させること、尚武館を存続させること、徳川家を陰ながら支えることという大意があった。

 

その大きな大きな存在が、老中田沼意次の手により一夜にして世を去ってしまう。田沼家の悪から得られる繁栄に、佐々木道場は邪魔というのが意次の意思であったがために、お部屋様と呼ばれる愛人あがりの側室 おすなが佐々木道場根絶の指揮を執っていた。おすなの性格の残忍さは磐音だけではなく、徳川へも向くほどの執着である。

 

まず、道場を追われた磐音らは、今津屋の好意で小梅町にある今津屋の別荘へと移り住んだ。毎日が田沼の見張り下にあり、自由のない磐音たち。しかしこれで終わる磐音ではない。敵の目をくらまし、西へと旅立つ。それがものすごくリアルで悲しい。

 

もともと佐々木家は徳川が暮らした尾張の出であり、菩提寺尾州にある。まずは養父養母の供養のために尾張へと向かう磐音とおこんだが、身重のおこんを連れての旅は容易ではなかった。しかし着実に一歩を進める中、目の前の道は開けてくる。

 

まず、尚武館でも元忍びの力を発揮してきた霧子がこっそりと磐音とおこんの出立後も二人を見守っていた。そしてついに二人と合流する。霧子がいるということは、師匠の弥助も共にあり、そこへ合流と相成った。

 

四人が落ち着いた尾張尾張徳川のお膝下ということもあり、生き生きとした活気がある。そして江戸とは異なる風習の中、磐音らは偶然であった尾州茶屋と懇意になり、尾張での暮らしを立てていくのだが、やはり磐音の人柄は尾張徳川へも通ずるものがあり、ここでやっと読者も一息だ。

 

その間、江戸もどんどんと変わっていった。佐々木道場に縁のある人物らが要職から排除され、おこんの養父速水左近は山流しと言われる甲府へと旅立った。磐音の不在に不安をかかえる人々。今はただ耐えるしかない。磐音も同様に時の流れに耐えていた。しかし長く構えていられないことが一つある。そう、おこんのお産だ。尾州茶屋の助けを受け、茶屋本家のある京都への逃亡を試みた磐音らであったが、田沼の追手が茶屋家に猛威を振るうことを恐れ、京都入りを断念する。

 

35巻で磐音ら4人は一大決心をし、新たな命のために歩みを進めた。その道は険しく、身重のおこんは何度も倒れるも、霧子の手によりどうにかその桃源郷までたどり着く。日が見えたかと思うとすぐに影が差すようなハラハラな展開。

 

そしてやっぱり人柄だよね、と磐音を見て自分の働きっぷりを反省中。