Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#723 再建~「居眠り磐音48~50」

『居眠り磐音48~50』佐伯泰英 著

尚武館の復活。

 

この頃楽しく読んでいる長編大作。

 

残すところあと1冊。ついに田沼が倒れ、磐音たちの生活がいつもの日々へと変わりつつある。しかし田沼死しても磐音の前に追っ手が現れる。かつて出された磐音を亡き者にせよという命は未だ生きていた。

 

物語の終わり手前のこの3冊、どんどんと時が流れて磐音の弟子たちもそれぞれ所帯を持ち、士官が叶った者もあれば道場に残る者もいた。幼子だった磐音とおこんの子もすっかり大きくなり、すっかり子供らしさが抜けてきた。空也は12歳になるまでは体ができていないという理由で道場への出入りを禁じられており、小梅村で独自の稽古に励んでいた。睦月は母を手伝いすっかり姉さん風なのだが、考えてみると睦月と空也は3つほど年が離れているはずだから、まだまだ睦月は小学校低学年ということになる。なんとなく本書の中ではすでに大人びているのは気のせい?いや、もっと物語が続いて欲しいと思う読者の気持ちが「そんなに早く大きくならないで!」と思わせているのかも。

 

田沼の衰えが見え始めた頃、山形に嫁いだかつての磐音の許嫁の奈緒が苦境に瀕しているとの知らせがあった。紅花で大成した前田屋が他界し、寝付いている間に店の者の裏切りで奈緒一家は前田屋を追われることとなった。磐音や吉原の手助けで奈緒は江戸へとやってくる。3人の子供たちは磐音の子らと歳も近く、元許嫁という立場でありながらもおこんはしっかりと彼らの生活をサポートする側に回った。

 

奈緒はもともと賢い人で、紅花がどのように作られ、製品となり、売られていくかと言う川下から川上までをも把握していたことから、江戸で独自のビジネスをスタートさせる。

 

さて、田沼の勢力は徐々に陥落し、田沼意次の死をもって磐音たちの因縁は終わりをつげた。戦うことせずあっけなく終わりを迎えてしまうが、次に老中へとついた松平定信の代となっても江戸はなかなか潤いを取り戻さなかった。

 

松平定信は磐音に恩がある。田沼への謀反の証拠とも言える刀を磐音は密かに回収して定信へと返した。定信は磐音を味方に付けたいと翻弄するが、磐音はその透けて見える欲になかなか良い返答はしなかった。

 

ところが、次代将軍となって家斉は家基と親しかったことから磐音の活躍を知っていた。また田沼らによる仕打ちにも心を痛めていた。おこんの養父であり、磐音の養父佐々木玲圓の剣友である速水左近の力もあったことだろう。ついに家斉が神保小路に尚武館を再建する命を下す。さらには磐音らの手を煩わせることなく、普請はすでに住んでおり、以前より広い敷地に道場の再建がかなった。

 

空也と睦月の成長に時の流れを感じる3冊だった。

あと残り1冊。