Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#678 江戸時代の祈願、大山参詣 ~「居眠り磐音 6」

『居眠り磐音 6』佐伯泰英 著

大山詣で。

この頃読んでいるシリーズもの。

 


シリーズものは時に飽きてくることがあるのだが、本シリーズにおいてはどんどん読みたい気持ちが高まっていく。大筋は主人公の磐音が幼馴染の死を苦に藩を出、地元豊後から遠い江戸に身を置くことで、陰ながら藩を支えて行く。そして、離れ離れとなった幼馴染で許嫁の奈緒を廓から救う。とてもとても壮大な本筋がある。そこへ、1巻1巻割とダイナミックな事件が起こり、本筋とともにスポットで起こる事件がかなり読み応えがあって止められない。

 

6巻目、磐音は旅に出た。と言っても以前のように地元への旅ではない。互いに信を置く両替商の今津屋のお内儀が地元の寺社でどうしてもお参りがしたいと言い出した。お内儀は体が弱く、今津屋吉右衛門との間に子はない。吉右衛門は妻の願いを聞き入れ、度に出ることを決めた。吉右衛門は、夫婦の他、お内儀の世話役としておこん、吉右衛門の世話役として店の者を、そして用心棒に磐音を連れ出すことにした。

 

お内儀は大山詣でを強く強く願っていた。地元でもあるが、ここは健康の願掛けでも有名であったからだ。地元に近づくにつれ、お内儀は少しずつ元気を取り戻していくのだが、磐音の向かうところ、何かとトラブルが起こる。大店の今津屋の主人の旅であれば、かなりの金を持って旅しているに違いないと脅してくるものもいる。

 

お内儀の願いを叶えるため、磐音は努力した。心の重みを寺や神社へ願をかけ、どうにか叶うようにと祈る気持ちは磐音にもよくわかる。江戸の生活も悪いものではないが、思い出の多い地元を想う心もよくわかる。だから磐音はお内儀の心へ寄り添ったのである。

 

ぼんやりテレビを見ていて、よく知らない国のイベントなんかが画面に映っている時、意図的に誰かにカメラの焦点が合っていないような状況で、なぜか目が行く人がいる。駅や空港で人が降りてくるのを待っている時、待ち合わせの相手以上になぜか目に付く人がいる。きっとそういう説明のできない輝きを俗にいう「オーラ」だと思っているのだが、きっと磐音もそんなタイプの人だったのであろう。目立つが故に善悪両方に目を付けられる。

 

お内儀の大山詣では磐音がお内儀を背中に背負うことでどうにか成就した。山の上部は女人禁制であったことから、磐音はお内儀の願が叶うようにとお内儀に代行して日参した。磐音の人柄がここでも読者を魅了する。

 

刀ではなく、人の命が去ることをテーマにした作品。