Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#687 止められないほど面白い~「居眠り磐音 12」

『居眠り磐音 12』佐伯泰英 著

歩く歩く歩く。

 

体調も要約回復の兆しが見え始めた。弱っている間、黙々と本シリーズを読み続け、読んでいるだけで充電したような充実感が漲っている。本当は合間に他の作品を読んだりもしたいのだけれど、Kindleの便利さが仇となり、続けて本シリーズを読むことに。Kindleはシリーズものを読み終えると、本を閉じる時にシリーズの次の作品があることを教えてくれる。即座に続編が読めてしまうので、止められない止まらない状態が延々と続くわけだ。

 

さて、本巻で磐音はまたもや旅をした。今度は割と近めの鎌倉だ。それにしても江戸が舞台の小説を読んでいると、「ちょっとそこまで」の距離が結構遠いことに驚くことがある。

 

例えば、こちら。磐音の住む深川六間堀から神田明神までの距離は今の地図で約3.7km。歩いて49分とある。これ、今なら乗り物を使って移動する距離だろう。

 

今津屋のある両国橋から鎌倉までは約53kmで、これは馬喰町から総武線で移動したとしても1時間以上の距離なのに、ここを歩いて行こうというのだから健脚だなあと関心する。私などはちょっとの階段も面倒でエスカレーターを使ってしまうこともしばしば、見習わなくてはと思う。

 

さて、なぜ鎌倉か。それは磐音がお世話になっている両替商、今津屋の後妻を得るためである。今津屋吉右衛門の妻、お艶は数年前に病で他界した。亡くなる直前、磐音はお艶の希望を聞き入れ、地元の相模まで同道し、大山参詣の夢を叶えるべく援助した。お艶が鬼籍に入り3年目となるこの年、跡継ぎのことを考えた今津屋老分の由蔵は、お艶実家の勧めのあった主の後妻候補に会うことにした。

 

これはお店としては大きなイベントとなる。抜かりなく、かつ慎重に相手を選ばなくてはならない。そこでまずは由蔵本人が相手に会って人物を知ろうということとなった。更にこのことは吉右衛門に知らせず、可能な限り少ない人数のみが知る情報としてとどめた。よって、今回のいざ鎌倉旅は由蔵と磐音二人のゆっくり旅である。

 

さて、お艶の兄は地元の娘を紹介したいと事前に知らせてきていた。その娘は武家での奉公から戻ったばかりという。そして今回はその父と妹も鎌倉入りしていた。娘二人は共に美しく、素養としても由蔵を満足させる。

 

しかし、ここで問題が勃発した。娘二人のうちの姉、すなわち吉右衛門の嫁候補が突然居なくなったという。総動員で行方を捜すが、その理由も、行き先もかなり曖昧であった。

 

しかしこれは功を奏する。磐音の考える女性像というのは、許嫁であった奈緒をもとにしているのだろうか。それとも実家の母や妹だろうか。今は今津屋のおこんとなんとなく近しい仲になりそうな気配もあるが、とは言えなんとなく共通するところがある。それは芯のある女性で、潔く、毅然としながらも温かい人。

 

少しずつ江戸が動いていく。磐音と奈緒の純愛が続くのか、おこんの存在が大きくなるのか、こちらも楽しみ。