Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#673 感覚を研ぎ澄ます~「居眠り磐音 4」

『居眠り磐音 4』佐伯泰英 著

奈緒の行方。

 

この頃気合を入れて読んでいる作品。

 

シリーズものはリアルタイムで読んでいると終わり来るのが悲しくなる。すでに刊行されているものであれば全体のボリュームがわかるので心置きなく没頭できるのが嬉しいところだ。

 

まだまだ4冊目だというのに物語は相当動く。主人公の磐音は豊後関前藩を脱藩し、江戸で浪人として暮らしていた。実直な生活で、武士であっても偉ぶるところもなく、加えて文武両道で人柄が良い。江戸の生活にも馴染んだ所、磐音は藩内に蔓延る悪の芽を摘むことに加担した。久々に豊後へ戻り、悪を成敗し、殿の言葉に応えて藩政を取り戻したまでが3巻目のお話だ。

 

さて、その磐音にはかつて親友がいた。最後は己の手で友の命を絶つことになったが、片時も忘れずに過ごしている。磐音はその友の末の妹と婚礼を迎える予定であった。ところが藩の策略に嵌り、友は世を去り、許嫁は家を支えるために身を売った。

 

許嫁の奈緒は豊後からまず長崎に売られた。磐音は奈緒を追って長崎に向かう。そこから奈緒の足跡を追うのだが、それがなかなかたどり着けない。奈緒は磐音が探しに来るであろうことを予期してか、立ち去る前に絵を置いて行った。

 

やっとの思いで楼を探すも、すでに奈緒は立ち去った後。なぜか次々と所を移し、その度に奈緒は高値で売られていく。ついには千両を越え、所在を確認した磐音は奈緒を身請けするための手段を考えなくてはならない。

 

未だ奈緒の居場所ははっきりしていないが、それでも磐音は奈緒の無事を祈っている。磐音と奈緒の事情を知った人々はみな磐音に手を貸し、彼らの無事を心から願っていた。磐音の語る言葉は無駄がなくストレートで読者の心を打つ。

 

私が時代小説が好きなのは、もう過去へ戻ることができないという点で完全にファンタジーでありながらも、歴史として残され学んだ風景が心に浮かんで身近に感じるからだ。そして自分の気が緩んでいるせいか、武士の実直な生活や心持ちに感銘を受けるからだ。芯のある人間でありたいと思いながらもそれが果たせずにいるので、磐音の姿に「ああ、こうあるべきだった」と教えを受けている気分になる。

 

目の前のやるべきことに集中できるのは、やはり武道のおかげなのだろうか。「道」とつくものには心を「静」の状態に切り替え、感覚を研ぎ澄ますものがあるのだろうか。1巻読む事に心が太く強くなる感覚に楽しくなる。