Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#672 アジア版の大ファンタジーについて妄想する~「後宮の烏 5」

後宮の烏 5』白川紺子 著

呪縛を切り離す。

 

この頃読んでいるシリーズものの第5弾。


ストーリーの大筋は、王宮の中、妃らが暮らす後宮に烏妃という者がいた。帝の夜伽はせず、国の神を祀る烏妃は巫術を使い、夜明宮にたった一人で暮らしていた。烏妃は代々夜明宮に住む金色の鳥が矢を放ち、その矢によって選ばれたものがやって来る。烏妃の次代まで8年あまりとなると矢が放たれ、次の烏妃となる者が後宮にやってきた。

 

烏妃は烏漣娘娘という神と一心同体で、これは初代の烏妃から脈々と継がれたものだった。現在の烏妃である寿雪は、その呪縛とも言うべき悪しき過去を断ち切ろうとする。帝の高峻も寿雪になにか自分に近いものを感じているのか、寿雪の自由を考え、烏妃の縛りを断ち切ることにした。

 

その方法はたった一つで王宮をぐるりと囲む9つの門に仕掛けられた初代の術を解くこと。そこにたどり着くに多くの時間がかかったが、方法も決して簡単に結界を解くことができないと知らされる。一歩一歩前進し、今、寿雪は烏妃のしがらみから切り離されようとする。

 

本シリーズは舞台が大陸を思わせる架空の国で、呪術などの幻想的な設定があるせいかアジアらしいファンタジーとなっている。年末にハリーポッターの映画シリーズをいくつか見ていたのだが、もし日本でハリーポッターのような大人も子供も楽しめるファンタジーが生まれるとしたら、恐らくそれは実写版というよりはアニメになるのではないだろうか。そして秀でた何かを持つ者が主人公で、確実に前に進みつつ成長するようなストーリーが好まれると予想する。

 

上橋菜穂子さんのシリーズにも素晴らしいファンタジー作品が多いが、やはりなんとなく大陸を連想させるものがある。映画化するなら香港映画風になりそうな、アクションあり恋愛ありの活劇風で、もし日本を舞台に世界で受け入れられるような作品を書くなら、どんな設定が良いのだろうと妄想している。

 

欧米人の抱くミステリアスなアジアを全面的に出すにしても、着物で手裏剣扱う主人公とか妄想すると、初めてカリフォルニアロールに出会った時のような大きな違和感になりそうでそれはそれで楽しんではいる。本作品はすでにアニメ化されてはいるものの、5巻目まではあらゆる可能性が羽ばたいていて「映画化して欲しい」な気分でいっぱいだ。

 

後宮から出ることのできなかった烏妃の運命がこれからどう開かれていくのかが楽しみ。