Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#662 ひたひたと押し寄せる何か ~「後宮の烏 3」

後宮の烏 3』白川紺子 著

敵の存在。

 

実はあまり怖い話が得意ではないのだが、本書は続きが気になって仕方がない。

 


怖いと思う理由は幽鬼にある。どうしてもこの世に未練があり天に昇れない魂だ。生前の姿のまま、時に人の目にも見える形で姿を現す。夜に一人で読んでいると今まで霊感なんかこれっぽっちも感じたことがないくせに、見えない世界が自分にも見えるような、いやむしろ何かに見られているのか!?な勘違い(であって欲しい)が起こる。それが妄想の世界を育ててちょっぴり怖くなる。

 

後宮に暮らす烏妃は国を守るための呪術を使う。ここで新たにわかったことは、具体的には国というより「王」を守る。烏妃は烏漣娘娘という神を守る神官のような役割で、神とは一心同体である。国が興った時、その王に就いた者を夏の王に、そして国造りに導いた神を司る者を冬の王に、彼ら二人が常に存在することで国の繁栄が得られるという歴史があった。その冬の王が烏妃であり、夏の王は現国王の高峻である。

 

二人は長らく烏妃の存在について考えていた。烏妃とは一体何者なのか。なぜたった一人で夜明宮に暮らさなくてはならないのか。どのように後継者が決まるのか。なぜ、現烏妃である寿雪がこの重荷を背負わなくてはならないのか。二人は自身の持つ役割を新たに知り、友として後宮を守っている。

 

寿雪は新月の夜だけはゆっくりと休むことができない。その日だけ、体内の神が起き出し、空に舞おうとするからだ。寿雪本人も具体的な烏妃のあらましを知らずにいるのだが、ある晩神が飛び立った時に見た男性に恐怖を感じた。一体あの人物は誰なのか。

 

その時と同じ恐怖を寿雪は後日、宮の中で感じることになる。得たいの知れない事件も重なり、その微かにに残る気ですら、寿雪の足をすくませるに十分な妖気を発していた。一体何者なのか。その恐怖は寿雪にしかわからない。しかも後宮には簡単に出入りすることはできないことから、もし呪術の世界を知る者がこの後宮に侵入したとあれば、それは大きな事件であろう。

 

日々濃厚となる謎の存在。それがついに目の前に現れ、恐怖が寿雪を襲う。目の前で語られる言葉の意味が寿雪には全くわからないのだが、無意識に恐怖が体を包む。おそらく体内の神には十分に理解の行くことなのだろう。寿雪の体も自然に反応し、事態を把握しようとする。

 

少しずつ烏漣娘娘の過去の情報が増えるにつれ、それ以前の国造りを行った神の姿が浮き彫りになった。寿雪には全く知り得ない話であったのに、体のどこかがそれを受け入れている。同時に理由の見えない悪意が寿雪を包む。

 

ああ、早く次読まなくちゃ。