Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#660 2022年は友情で締め!~「初秋の剣 大江戸定年組」

『初秋の剣 大江戸定年組』風野真知雄 著

引退した3人組。

 

2022年の読書記録も本日が最後。今年は夏と冬に大きな仕事があり記録を残せないタイミングが多々あったことから、きっと記録し忘れている作品もあるはずで、とは言え、今年も楽しい読書が出来たことに感謝です。

 

人によっては本日が仕事納めという方もいらっしゃると思うので、一足お先に休暇に入ったことになるのだが、年末の準備が全く手つかずだったことから今から準備しなくてはならずやることいっぱい。大掃除もしていないし、年末の買い出しもいかなくては。あれこれ「やらなくちゃ」がたまっている時、仕事であればストレスいっぱいになるのだが、家のこととなると楽しく感じられるのが不思議なところだ。

 

さて、年末はやっぱり時代小説が読みたい。この間のAmazonの50%ポイント還元の時、気が付いたらものすごい数の書籍を購入していた。シリーズものをいくつか購入したので、それらをゆっくり読みながら過ごそうと思っている。まずはKindle Unlimitedで2巻まで読める本書から読むことにしよう。

 

息子に家督を譲り、隠居としてのんびり過ごそうと思っていたのだが、いざ隠居となるとやることがなくて暇すぎる。趣味があれば時間をつぶすこともできるだろうが、現役時代は仕事一本で趣味を育てる間もなかった。唯一の心の支えは家族と幼い頃からの友である。

 

元旗本の夏木、元同心の藤村、商人の仁左衛門は、幼い頃に大川での水練で知り合った仲で、身分の垣根を超えての友情を築いている。もとは4人仲間だったのだが、一人はすでに他界してしまった。その友の死をきっかけにしばらく離れていた3人が集まるようになってからは、また子供の頃のようにつるんでいる。

 

おっさんというか、定年後のおじさん3人というパターンは他の作品でも読んだことがある。そして世直しというか、世のため人のために活躍という設定が多い。すでにパターンかされつつあるような気がするのだが、定年後の男性3名の場合は正義を貫く立場を選ぶ場合が多い気がする。大泥棒とか、大作戦とか、そういうのがあってもよさそうだけれど、マイナス要素から頭角を現す大胆なものだと、なぜかおばちゃんの方が似合いそう。

 

さて、本書の3名は引退後に家を借りる事にした。隠れ家だ。言い出したのは元同心の藤村で、景色の良い家を借りて気ままに過ごそうと提案する。元同心なので今でも何かと頼りにされる藤村のもとへは時に助けを求める町人がやってくる。たまたま手を貸した商人の持ち家が彼ら三人が求めるような「景色」を持っていた。そこは2階から3人の出会いの場所である大川の入江がしっかりと見える絶景だった。

 

3人のキャラクターは長く友人であるのでどこか似たところがあるのだが、夏木は惚れっぽく、仁左は軽々と世を渡り、藤村は勘と洞察力に長けている。それがうまく混ざって人助けが始まるというお話だ。

 

年末読むのに丁度よいほっこりさ。人間らしさのにじむ作品で、友を敬い信じる彼らの姿にちょっぴり羨ましく思ったりも。幼少期の友人と還暦まで一緒に過ごせるなんて、誰もが出来ることではない。大人になるにつれて暮らす世界が変わってくるから、友人付き合いの範囲もどんどん変わる。しかも彼らには身分という差すらあるのに、そんなしがらみも軽々と乗り越えてしまう互いへの友情に、やっぱり羨ましい気持ちが止められない。

 

幼い時からの仲間と共に集いの場となる隠れ家を持ち、跡継ぎたちもどうにかそれなりに育ち、なんの心配もない。一緒に泳いでいるだけで楽しかった子供の頃のように、おっさん3人はまたともに大川の前に立つ。

 

今年もたくさんの読書のご縁を頂きました。ありがとうございました。

来年もよい読書が続きます様に。良いお年を!