Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#590 ストンと腑に落ちた ~「賢者の書」

『賢者の書』喜多川泰 著

イードの旅。

 

Kindle Unlimitedの年間契約をしてから、おすすめに上がってくる対象の書籍をなんとなくクリックしては読むようにしている。こちらは気持ちが英国に向いていた時、タイトルになんとなくハリーポッター的な(あちらは「賢者の石」です)ものを感じ、これまたなんとなくクリックした作品。結果として、今の段階で読めて良かった!と思える作品だった。

 

気が付かなかったのだが、著者の作品を読むのは2冊目だったようだ。

 


一時期、あれこれうまくまわらなかった頃の話だが、自己啓発系の本を読み漁っていた事がある。読めば慰められはするが、抜本的な解決には至らなかった。頭では理解できるけれど、なんとなくモチベに繋がっていなかったからだろう。その当時は頭の中に「どうすれば現状を打破できるのか」みたいな言葉だけが巡っており、実際に打破するターニングポイントは訪れなかった。きっとものすごく勘の良い方なら、書籍から大きなひらめきを得られるのだろう。まだまだ悟れてない!と自覚しつつ、あれこれ試すもやっぱり何か歯車が思ったように回ってはくれない。

 

今思えば、小さな行動を起こすにもとてつもないエネルギーが必要だったわけだが、それを繰り返し続けていかない限り突然変化するなんてことはないのだろう。例えば、新しいコミュニティーに属することになったが、どうもそこに馴染めない。さあ、ここでアクションだ!と積極的に輪に入るべき対応を考え、実行するハードルの低いものから試してみる。その小さな一歩を踏み出すことが一番ハードで、次にその小さな一歩を出し続けて前進することが大切なのだろう。私はこれができなかったから、悶々とする日々に舞い戻っては悩み、また自己啓発本を読んで試し、またまた挫折、を繰り返していた。

 

人にはそれぞれの悩みがあって、人の数だけ悩みがある。お金が必要だという人が自己啓発の本を読んで、一念発起するとしよう。そこで得たinsightをたった数度試しただけで手元に希望の金額が入ってくるなんてことは稀だろう。逆に、ビジネスで成功しておられる方は何度も何度も挑戦を繰り返したに違いない。継続こそが一番の種なのかもしれないが、種をまく作業がそう簡単ではないということだろう。だからこそ、いろいろな自己啓発本が書かれ、読まれている。

 

本書のストーリーはこうだ。アレックスというサラリーマンは、静かな所に身を置きたいと思わず飛行機に飛び乗ってしまう。アレックスは父親の仕事についてドイツに住んでいたことがあり、その時は言葉が通じないことからいつも独りぼっちだった。寂しさを紛らわすために訪れていた公園のことを思い出し、早速旧知の街へ向かう。その公園はただただ静かだった。アレックスはすっかり遮断されたような空間として、その公園に日参していた。久々に訪れたかつての公園でアレックスはすべての喧騒から逃れ、静寂を満喫する。

 

すると前から少年が歩いてきた。靴はぼろぼろで疲れ切っているようだ。少年はなぜかアレックスの座っていたベンチに腰を掛ける。話を聞くと、少年の名はサイードで最高の賢者になるため、最後の賢者に会いに来たという。サイードが最高の賢者になるには9人の賢者から教えを受ける必要があり、今まで会った8人の賢者からの知恵は本にすべて記録されていると、古ぼけた大きな本をアレックスに見せてくれた。

 

アレックスはサイードの許しを得て、その本を見せてもらうことにした。そこには8人の賢者がサイードに教えた内容が事細かに記されていた。これはサイード自らが書いたのではなく、教えを受けると賢者はパズルのピースを1枚、サイードに渡す。パズルのピースは鍵の役割で、本にセットするとそのビジョンが現れる。そしてビジョンが本に文章を残す。この本は最終的にはサイードのものではなく、9番目の賢者に手渡されるという。

 

アレックスは夢中で読んでいく。その一つ一つの教えが、どこかで聞いたことのある話ではあるのだが、「パズル」というキーワードのせいか、一つ一つが身に染みる。今までの自己啓発の本はなんとなく年齢制限みたいのがあった。例えば80歳の人が自己啓発本を読んでもなかなかLife Hackなことにはならない様な風があった。ところが本書は性別も年齢も関係なく、どんな人にも適応する話があった。ここ数年、あまりこの手の本を読んでいなかったせいか、ものすごく腑に落ちる上にその場で実行し始めたこともいくつかあったほどで、すっかり心酔してしまう。

 

実は登場人物の口調の違和感などで、さっと読めたわけではなく、少しずつ何日かかけて読んだ。かえってそれが良かったのかもしれない。時にふと思い出しては「ああ、そうだ!気を付けよう!」という思いになる。

 

主人公のアレックスは50歳を過ぎ、会社でトラブルを抱えていた。人との問題、業務内容の問題、本書ではそのいくつかを説明しているが、それ以外にも人は数々の問題を抱えている。それがなぜかどんなケースでもピッタリ合ったアドバイスに見えるのが不思議でならない。この頃、社内の人間関係にイライラが募りすぎて、つい周りに愚痴る日々が続いていたのだが、本書のおかげでそのモヤモヤもすっと心から消えてしまったようだ。すごい!

 

大人にも子供にも「人生」のイメージをしっかりと見せてくれる一冊。