『技術者のためのテクニカルライティング入門講座』高橋慈子 著
わかりやすい!
仕事の話なのだが、8月中にどうしても終わらせなくてはならない案件がある。このプロジェクトのためここ数年かかりきりで作業を進めている。いや、「いた」。なぜ過去形かというと、出張続きの日々が終わって約2週間。東京へ戻ってからというもの、仕事が一向に進んでおりません。完全に魂、抜けてます。「やる気」みたいなものが湯気のようにほわああっと体から出て行ってしまい、2週間くらい同じことをダラダラと。前進も後退もない状態で8月半ばを迎えてしまった。
本来こんなぼんやり状態でいてはいけないし、すでにある程度の結果が見えていなくてはならない時期なのに7月末となんら変化がないって...。ということで、お仕事モードになるために関連書籍を読むことに。そもそも私は理系の勉強をほとんど学ばずに来てしまったので、技術系のお話が苦手である。新しい家電を購入した後に取説読んで機能を把握しようとするのだが、なかなか頭に入ってこない。わからない単語も多いし、カタカナいっぱいで尚混乱。しかし仕事となると「苦手です」とも言ってられず、Amazonで評価の高かった本書を購入した。
技術文書はとにかくシンプル、事実のみを淡々と書いていくものだとはわかってはいるのだが、ビジネス文章のように「拝啓」からはじまる紋切型の定型があるようで、ないようで、やっぱりあるような、ないような...と、初心者にはよくわからないことが多い。
本書は、そんな初心者を対象とした書籍で、基本は「ロジカルライティング」と「テクニカルライティング」を使い、わかりやすい文書を作ることができるように指南する1冊となっている。まずはロジカルシンキングでロジカルツリーとなるように書くべき情報を組み立てる。そして、それを整理しながらまとめ、読み手にわかりやすい情報提供を叶えるやり方だ
ざっくり一言で「技術系」と言うが、その分野はものすごく幅広い。さらには文章化される資料もいろいろあり、本書では実践編として「取扱説明書」と「提案書」と「障害報告書」と「社外メール文」の書き方について具体的な例文とともに説明している。ダウンロードできるものもいくつかあるのが、かなりさっくりな文章で、定型文とはまた異なる。
そもそもだれが読んでも理解できるような明解な文章を作るにはどうすれば良いのか。それが「ロジカル」の部分であり、極力余分な情報を割いていく。その中でいくつかの注意事項があるのだが、↓ これはものすごく腑に落ちた。
左のページにある文章を書き抜こう。
(変更前)セキュリティーソフトウエアの適切な利用により、外部からの攻撃のリスクが低下します。
(変更後)セキュリティーソフトウエアを適切に使用してください。外部からの攻撃を防ぐことができます。
「低下する」でも良さそうなのだが、名詞+する系ではない動詞を選んだほうがすんなりわかりやすい。また変更前は句読点でつないだ長めの文章になっているが、変更後は2つの文章に分かれている。短い方が断然頭に入ってくる。
動詞をうまく使う文章は、他の報告書などでも文章を書く際に非常に参考になった。とくに翻訳しにくい文章が名詞+する系の単語が山盛りな文章だったりするので、自分で文章を書く際にも気を付けたい。
何年もその業界におられる方であれば物足りなさが目につくかもしれない。でも文系が理系の文章作るなんて!とお悩みの方には激しくおススメしたい一冊。