Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#556  着物に絵を付けるというお仕事 ~「上絵師 律の似面絵帖1~7」

『上絵師 律の似面絵帖1~7』知野みさき 著

父の仕事を継ぎ、女ながら上絵師の仕事をはじめた律。

 

日常復帰。長く家を空けていた間はほぼ読書も儘ならず、それでも隙間時間にこちらのシリーズを読んだ。本シリーズは随分前にAmazonで何かバーゲン的なイベントがあった際に購入しておいたもので、現在Kindle版は7巻まで販売されている。

 

約2か月で7冊だから通常の読書ペースとしてはかなり遅く、寝る前にちょっと読もうと思ってもすぐに寝落ちしてしまったりとものすごーくスローな上に全く読書が出来ない日があったりとシリーズものを読むには適した環境ではなかった。

 

とは言え、登場人物が記憶に残りやすかったこと、ストーリーがあまり複雑ではなかったこと、7巻すべて連続性があるとは言え良い意味で平凡な日々が語られていたことから、間があいても内容を忘れることなく読み続けられたのかなと思う。

 

ストーリーは両親を亡くし歳の離れた弟と暮らす律が、長屋に住まいながら日々精進するという話で、父が営んでいた上絵師を継ぐという職人としての意思、幼馴染で青陽堂という葉茶屋の息子涼太への淡い愛情が軸となっている。律の両親は二人とも辻斬りにあっており、最初に母が、そして父も失意のうちに他界した。どうにか生計を立てるため、父の仕事を継いだ律だったが女の上絵師はめずらしいせいか職人として独り立ちするまで苦労する。

 

律は幼い頃から父親の指導もあり絵を描くのは得意な方だった。それがある日何気なく描いた似顔絵が捕り物の助けとなる。それ以降、律のところへは知り合いの同心からの依頼があり、似顔絵を描いて事件のあらましを聞き、奉行所を助ける。本来は上絵師として立派に独り立ちすることが律の目標ではあるが、似顔絵を描くことで得られる収入は律の生活を支えることとなる。

 

もしかすると途切れ途切れに読んでいたので7冊すっと読めたのかもしれない。というのも、上絵師としての律の成功の話も、捕り物の話も、愛や恋などの華やかな話も、どれもなんとなくぼんやりしていて「この巻にはこんな話があったな」と思い出せる部分がものすごく薄い。逆にそれが集中して読書できない環境下ではプラスとなったが、ガツガツと本を読みたい!という時には少し刺激が足りないというか、時代小説の王道よりかなりマイルドだ。うん。マイルドという単語がほんとにぴったり。

 

着物に絵を付けるというのは意匠から色合いまで、センスの問われる世界のようだ。更には着物は現代の「服」のように気軽に何着も持てるものではない。どんなに裕福な人であっても私たちのワードローブなんかよりも少ないはずだ。だから込められる思いは深く、心に寄り添う部分が多いようだ。ここ数年着物に袖を通す機会がなかったが、久々に「着物きたい」という気持ちになった。

 

とはいえ、このシリーズのおかげでどうにか乗り切ることができたのでありがたく思う。8巻目は文庫本では出ているようだけど、Kindle版はまだ発売されていない。もしかすると8巻目には進まず、少し他の作品を読みたいかなーという気分。