Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#525 時代小説「あるある」のワナに落ちました😢~「鬼を待つ」

『鬼を待つ』あさのあつこ 著

弥勒の月シリーズ、第9弾。

 

週末ゆっくりというか、ぼんやりしすぎていたせいだろうか。なんとなく今週は力が入らない。すでに5月病の気配が漂っているが、やっぱりGW前のせいでなんとなくやる気が整わないのだろうか。とはいえ、やっぱり月末の業務はあるわけで、明日一日しか営業日がないとなると急ぎでやるべきことは山とある。なのに、なんでしょうね、この気の抜けっぷりは。

 

そんなぼんやりが読書にまで伝染し、またやらかしてしまった。私的には「時代小説あるある」なのだが、シリーズものの巻数がわからなくて読む順番を検索する必要がでてくる。Kindleは最近とても親切なので「次に読む」として次号を教えてくれるシステムになっているものがある。が、このシリーズに関しては第5号あたりからお知らせが出てこなくなった。

 

で、この頃このシリーズのことをすっかり横に置いて他の作品を読んでしまったので続きを読もうとKindleのリストの一番上にあるものから読んだのが間違いでした。なぜなら、これ第9巻目。私が最後に読んだのがこちら。


「地に巣くう」は第6弾。7と8を飛ばしてしまった…。ああ、なんともったいないことを!しかも読み終わるまで気が付かなかったのがこれまた何とぼんやりなことか!!!

 

本シリーズは1冊で1つの事件を扱っているので、まあ読み切りと言えばそれまでなのだが、要は1冊でストーリーが完結している。ただ、登場人物の背景などはずっと継いで来ているものなので、そこだけはシリーズを追ってこそ蓄積される読書経験値となる。

 

きっと7と8を読んでいないので見落としている部分がたくさんあるはずなのだが、とは言えやはり本作も唸るほどの面白さだった。

 

今回も伊佐治親分が健在なのが何よりも嬉しい。人の心をふと温めてくれるような何気ない言葉遣いは見習いたいものだ。そして信次郎は相変わらずな自由っぷりだが、今回ばかりは狙った事件の謎が多く、少し控えめ。

 

さて、今回の事件はなんとも恐ろしい。まず、事件の発端は自ら命を絶った男から始まる。よくありがちな酒の上での喧嘩から始まり、相手に致命傷を負わせたと誤解した酔っ払いが自らの行いを悔いてのことだと事件は幕を閉じた。ところがそこから見えない糸がするりと伸びるかのように、次の事件が信次郎たちを引き寄せる。

 

まず、事件は類似性を秘めており、残虐性が見て取れる。「だれが」「なぜ」を追っていくと、やはり今回も馴染みの小間物屋、遠野屋の主である清之介に行きついた。実は清之介は事件の数日前に被害者の家を訪れていた。というのも、大型の注文があったからだ。番頭の信三を伴い向かったわけだが、その場で異様な取引を提示される。

 

清之介の出自は複雑で、武士の妾腹であったことから影の存在として育てられた。父に引き取られてからというもの、頼れるのは兄と台所を取り仕切る婆だけの寂しい生活で、婆からは耐えることを学ぶ。ところが、闇に生きる覚悟を植え付けるため、父はその恩人を切れと命ずる。そこから清之介は氷のような冷徹さで日々を耐え、一方で愛とともに生きたいという願望も膨らんだことだろう。

 

清之介が江戸に出て来たのは兄の手引きがあったからなのだが、兄は今や政にどっぷりとつかり、以前とはすっかり変わってしまったことに時の流れを感じざるを得ない。そんな清之介も今やすっかり影の存在から大店の主として商人の道を懸命に生きている。

 

しかし9巻目ともなると信次郎と清之介の信頼感も強固となり、そこに安堵するようになったのはシリーズが成熟しつつあるからだろう。とくに本巻は清之介の傷をえぐるような、弱みをついた相手の作戦に読む側も「なんと卑怯な!」と思わず声が出そうになってくる。なんだろう、ちょっと伊佐治親分が乗り移ったかのような遠野屋への肩入れっぷりがあふれ出るストーリー。

 

ああ、これもう逆順だけど7と8を早く読まなくては、ですね。いつも通りにネットで読み順を確認しなかった自分が悪いのはわかっているのだが、やっぱり並び通りに呼んでこそ!ああ、なんともったいない!これからも時代小説を読むときは順番に気を付けなくては。