Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#462 和の色の癒しとインパクト、というところでしょうか~「江戸彩り見立て帖」

『江戸彩り見立て帖』坂井希久子 著

色を見極める仕事とは。

 

1月も末となり、そろそろKindle内を整理しなくてはと思っている。すでにコンテンツはまとめてあるのになぜかKindle本体に連動しないという状態が続いているので、本を探そうにも探しにくい。なんの整理もされていない図書館から1冊の本を探すようなことになっているので、既読の書籍の中から再読の可能性が低いものは削除するようにしていかないと。

 

本書は「居酒屋ぜんや」シリーズが終わってしまい、何か似た感じのものを読みたいなーと思っていた際に購入した一冊だ。

 


「居酒屋ぜんや」は楽しく読んでいたのだけれど、最近始まった新しいシリーズは料理が主体ではないので今後読むかどうかはまだ考え中。

 

さて、本書のテーマは食べ物ではなく「色を見る」ことを特技とするお彩が主人公。お彩の父は摺師であった。摺師とは昔ながらの木版印刷の専門家のことで、お彩の父はその道で活躍する親方だった。摺辰は高い技術を誇る代表格であった。ところが火事でお彩の父は視力を失い、数多くいた弟子たちも去っていく。

 

その去った弟子の中に卯吉という青年がいた。卯吉は今はライバルとも言われた摺久で修行している。お彩はそのことが許せない。父を捨て、そして許嫁でもあった自分を捨てた卯吉は今や鋭いトゲとなりお彩の心にささったままだ。

 

摺師というのは基本3つの色を操り何色もの彩を生む。摺師の家に生まれたお彩は幼い頃から色味の差異に敏感だった。今は古着屋の仕立ての仕事で糊口を凌いではいるが、たまに頼まれれば近しい人の着物の色などを見立てることもする。

 

ある日、お彩は赤富士の絵を見て、その赤さに「これは違う」と憤る。良く言えば竹を割ったようなはっきりした性格だが、お彩の言葉は時に我が強く、きつい。摺った絵を売る先に強い口調で文句を言っていた所、京ことばの男が近づいてくる。この男、名を右近といい、なにかとお彩につきまとう。

 

本作は恐らく続編が出ることと思われるが、1巻目ではこの右近の登場でお彩の生活に変化が出てくるところまでが描かれている。

 

色と言えば、私は和色のペンが好きで見つけるとつい購入してしまう。万年筆のインクなどは惹かれる色が多いのだが持っている万年筆の本数が3本しかないのであまり冒険できていない。最近ではこれがお気に入りだ。

 

 

日本の木版画がヨーロッパに渡り、驚きをもって迎え入れられたという話を聞くことがあるが、もしかすると色の与えたインパクトも大きかったのでは?と思う。上のペンもそうだけれど、和の色にはパステルカラーとはまた違った柔らかさがあり、薄付きなパステルカラーに比べてもっと主張がある。どこか温かみもあれば、冷たさもあり、まさに自然からもたらされた色合いを落としたような美しさがある。もちろん登場人物が着物を着ていれば「ああ、これは日本の美術だな」とすぐにわかるだろうけれど、和の色は遠目にも眼福だったのかも。

 

カラーコーディネーターという仕事があるが、その江戸版というところだろうか。身にまとうものの色はそれぞれ似合い不似合いがあるので、客観的な意見を聞けるととても助かる。お彩の知識は基本摺絵によるものなので、歌舞伎や浮世絵の造詣も深く、ただ肌に合うからだけではなく「どうしてそれなのか」という背景にも触れているところが独特なのかも。江戸時代には華美な生活を禁じられることもあったから、これからどのような色合いの話が出てくるのか楽しみだ。

 

それにしてもここ数年、あたらしい服を買おうとか、リップを買おうとか、ジュエリーを買おう、なんていうことが全く無くなった。こうして考えてみるとファッションに関わるものは、色を楽しむ部分が多かったんだあなーと改めて思う。本当に今年中にコロナは終息するのだろうか。WHOの言葉を信じたいものだ。

 

ところで、昨日ニュースを見ていたら東京江戸博物館が4/1より3年間の改修工事のため休館するとのことだった。コロナでなかなか行けずにいた江戸博物館!改修前には是非行きたい。

 

www.edo-tokyo-museum.or.jp