#553 やっぱり映像化されていましたか~「闇の狩人 (下)」
『闇の狩人 (下)』池波正太郎 著
弥太郎の過去。
本日よりまたまた地方へ。この大雨で飛行機が飛ぶかどうかが心配なのだが、今のところ変更情報も届いていないのできっと定刻通りに出発できることだろう。
さて、南九州からの帰り、待ちに待った本書の下巻を読み始めた。
時代小説を本格的に好むようになってまだ数年。本シリーズは1980年代に書かれた時代小説なので、昨今のものとは文体や登場人物の心の声の表現方法が異なり、それもまた味を添えてくれたような感じだ。
主人公の谷川弥太郎、本当の名を笹尾平三郎という。山で襲われ、崖から落ちた時に記憶を失ってしまったらしい。それを介抱したのが大盗賊の小頭だった弥平次だ。名前が無いのも不便なことと、谷の傍で見つけたことから谷川という名字を、そして名を自分に因んで弥太郎とした。
しかし、追手の存在に気が付いた弥太郎は、弥平次のもとを去る。ずっと気にかけていた弥平次だったが、数年後に江戸で偶然の再会を果たした。なんと弥太郎は香具師のもとで人を殺める仕事についており、弥平次は絶対に救って見せると意気込む。
上巻で、弥太郎は香具師から託された仕事にあたるが、その時相手が自分の名を呼んだ。笹尾平三郎、その名が弥太郎の過去を追うカギとなる。
下巻では弥平次が翻弄し、どんどんと弥太郎の傍へ近付いていく。時には危ないことも多いし、盗賊仲間は自身が跡目に着きたいと弥平次の命を狙ってくる。人の心の欲が渦巻くなか、不思議と弥平次と弥太郎の周りには澄んだ空気が漂っており、読んでいるうちにどんどんと背筋が伸びてくる。
悲しい事に弥太郎の記憶は戻らない。しかも怪我のせいか、同時にいくつものことを考えることができない。あれこれ考えようとすると頭痛が弥太郎を襲ってくる。しかし体は別のようで、意思とは関係なくすっと直感のもとに動けるようだ。下巻で弥太郎の過去が一つ一つ解かれていくのだが、やはり芯のまっすぐな心があったからこそ、こうして記憶を失っていてもなぜか人を惹きつける魅力があるのだろう。
調べてわかったのだが、なんと2回もドラマ化されたうえに映画まであるらしい。
ドラマは1994年と2013年の2度あり、映画は1979年の公開だ。やはり名作というのは映像化も多々あるということなのだろう。古い作品、一度見て見たい。