『まんぷく旅籠 朝日屋 1』高田在子 著
ちはるの新しい生き方。
小春日和が続いている今日この頃、温かさにぼーっとしてしまったのか本を読む順番を間違えてしまった。
本書はこの冬に楽しく読んでいたこちらのシリーズと同じ著者の作品だ。
時代小説にはタイトルに巻数のない物が多い。今回はシリーズものとは知らずに購入してあったので、全く疑いもなく本シリーズの2作目から読んでしまった。なんだろう、つじつまが合わないぞ。調べてみるとなんと1巻があるではないか!あわてて1巻を購入して読み始めた。
シリーズ第1巻を読み、やっと旅籠朝日屋の背景がわかる。まず、こちらで働く人はそれぞれが何か過去に悲しい出来事に見舞われている。例えば主人公の千春は、両親が経営していた料理屋をだまし取られた。店を追われ、長屋で細々と暮らしている間に両親はあっという間に他界してしまう。
朝日屋の主は元火付盗賊改だった怜治という男だ。怜治はちはるの父が頼りにしていた役人だが、父の店が悪者の手にかかった時に肝心の怜治がどこにいるのか定かではなかったことから、店を手放す羽目になったとちはるは信じている。
長屋で暮らしていたある日、この怜治が突然現れた。そしてちはるの借金を帳消しにすべく談判し、朝日屋へ誘った。そこには腕に怪我を負う料理人の慎介と朝日屋の土地を有する兵衛がいる。そして旅籠とはいいつつもまだ一度も客が来たことがないという微妙な店だった。
ちはるは料理屋の家で育ったことからか嗅覚に優れており、料理を作るにあたっても嗅覚を活かす。板長の慎介も実はちはると似たような過去があり、勤めていた店に悪人が手を付け、慎介は腕に怪我を負った上に大切な店は無くなった。その怪我により思うように手が動かなくなってしまった慎介だが、料理の腕を信じ、そして過去に世話になったという理由から兵衛が無くなってしまった慎介が務めた店の跡地を手に入れ、新たに朝日屋を建てる。とにかく慎介の料理は澄んだ魅力がありそうな、読んでいるだけで食べてみたいなーと思わせる力がある。慎介の腕の代わりにちはるの嗅覚が加わり、朝日屋は旅籠というより料理屋のような風体に育っていく。
怜治の伝手で朝日屋には良い人材が集まり始め、慎介の料理の腕やちはるのアイデア、怜治の知恵などがうまく合致し朝日屋が軌道に乗り始めるという話。
先に2巻目を読んでしまっていたので、読了感は「ああ、そうか。ちょっとスッキリ!」と謎だった部分が見えてよかったな、と思う。さて、2巻目もちゃんと記録しておこう。