『口福のレシピ』原田ひ香 著
引き継がれたレシピ。
ゴールデンウィークが近づいてきたので、あれこれ何をやろうかなーと考えている。ゆっくり時間が取れるタイミングでやっておきたいことと言えば、大掃除と衣替えと包丁を研ぐこと、そして最後に断捨離がある。なかなか進まない断捨離だが、なんとなくとは言え、道が見えて来たような気がする。新しいものを買わず、まずは在庫を消費することが大切なようだ。思い切って捨てるのも手だが、なんでも簡単に捨てることにも抵抗がでてきた。当分の間、断捨離とは「簡単に買わない」がテーマとなりそうだ。
そういえばこの頃料理の本を読んでないなと思い、本書を読んだ。こちらもKindleのセールの際にまとめて購入したうちの一つで、タイトルの「レシピ」に惹かれた。この頃食べること、作ることがテーマの小説を楽しく読んでいるので期待しつつ読み始める。
主人公の留希子は長く続く料理学園の家に生まれた。今は祖母が会長、母が社長として学校経営に携わっており、以前にお世話になった食品会社の社員を引き抜き理事長の席を与え、現在は3人態勢で運営しつつもそれほど上手く行っているとは思えない。
一方の留希子は親に敷かれたレールを歩くような人生を否定し、現在は友人と共に都内で暮らしている。親の希望で家政科に進んだが、せめて何か技術をと卒論でアプリの製作に携わったことから、卒業後はSEとして就職した。今はそこを出て、フリーランスとして前の会社から仕事を引き受ける傍ら、和食を中心としたメニューを紹介することもやっている。
留希子の家というか、学園には一つ表に現れない歴史があった。昭和初期のその時代の出来事と今が行き来する設定は以前に読んだ著者の書籍に似ているかも。
さて、肝心のレシピだ。留希子がレシピを公開するようになったのは、SE時代に食が疎かになり体調を崩したことから、自分を鼓舞するためにも作った料理をSNSにアップすることから始まった。それが反響を呼び、いつしか数万人ものフォロワーが付くようになる。
留希子には家庭の味というものがわからない。というのも、父は幼い頃に他界し、母は祖母とともに学園経営で忙しくいつも一人で食事をとっていた。とはいえ、作ってくれていたのはお手伝いさんなどで、むしろ食事の内容は大変に豪華であった。お手伝いさんもやはり学園に関わりのある人で、スタッフとも言える。よって作られていた料理は学園で教えるもので、言わば留希子の家の味に違いない。とは言え、留希子は家の仕事にはかかわりたくないと距離を置く。それがある日、理事長からの連絡で留希子の人生に「家」の一部が食い込んでくる。
そのキーとなるのが留希子の家のレシピだ。思い出のレシピ、絆のレシピ。今ではどの家庭でも作られている「豚の生姜焼き」、それが家族を繋ぐ。確かに、生姜焼きってそれぞれの家でいろいろな工夫があると思う。どのタイミングで生姜を入れるかもそうだし、生姜を擦るかスライスにするか、甘みを何で出すか、肉の厚みで焼き方だって変わってくる。料理を習うとき、かなり初期に習うけど結構奥深いと言っても良い。
留希子の家の隠し味に「ああ、なるほど!」と思う。これは良くあるパターンだろう。私が今までに美味しいと思ったのは柚子を使ったレシピだ。多分ママレードとかでもいけるはず。これは本当に滋味とも言えるようなふんわりした美味しさだったので家でもたまに作ることがある。
ああ、やっぱり料理の本を読むと心が上がってきますね。連休が楽しみ。