Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#518 京都の街を歩きたい~「京大はんと甘いもん」

『京大はんと甘いもん』藤井清美 著

昭和初期の京都の町。

 

先週は夏の暑さになったかと思いきや、週末は冷たい雨となりなんとなく体の調子が整わない。

 

この週末はゆっくり体を休めようと本書を読んだ。この本を買ったきっかけは、たしかKindleセールかなにかの時にたまたまおススメに上がって来たからだったと思う。「京大」ということは京都だし、「甘いもん」といえば和菓子だろう。表紙のイラストにも学生さんがワイワイやっているような感じで楽しそう!というのが購入のきっかけだったと思う。

 

てっきり和菓子好きの京大の学生さんたちが集って、京都の伝統的な和菓子が話題となるような楽しい小説なんだろうなーと思っていた。ところが、読み始めてみると全く予想と異なるストーリーだった。

 

主人公はサラリーマン。会社で上司のろくでもない対応に怒りをぶつけ、思い付きで新幹線に乗ってしまった。名古屋で降りるはずが気が付くとそこは京都。そういえば昔…と祖父が生きていた頃のことを思い出す。

 

祖父は京都大学の学生だった。祖父が語りだすと話は長く長く続くし、そもそもあまり自分のこと以外にのめりこむ質ではなかった。それどころか、自分自身のことにもどこか諦めを感じているようなところがあり、必死になにかをしたことが無いような男だった。

 

それが、なぜか祖父に導かれるかのように京都に着き、ふと昔のことを思い出した。それは、修学旅行で京都に行くことになった時のことだった。あるお菓子を買い、それをあるところに備えて欲しい。なんとなく気乗りはしなかったが祖父の頼みということで一応はやった。その報告をかね、お菓子を届けに祖父のもとを訪れた時も、ろくに話も聞かずに忙しいからと早々に祖父の家を出た。それが、祖父との最後となる。

 

その時のことを思い出し、ふとあの店を訪ねようと足を向けた。何十年も前のことなのにちゃんと覚えているものだ。店には着いたが、その店はなんと少し前に店を畳んでいた。ああ、自分の人生はなぜ毎度こうなのだろうと思いつつ、あの時お供えした場所はどこだったかなと京大へ向かう。

 

そこからはなんとも不思議な展開になるのだが、一言で言えばタイムトラベルして祖父の学生時代に飛び込んでしまう、というお話。自分が祖父として祖父の学生時代を体験する。

 

お菓子の話も出るには出るが、タイトルとなった理由はお菓子がきっかけで主人公が京大生になるからだろう。そして今も販売されている有名どころのお菓子がいくつか登場するが、今回はあまりチェックすることもなく読み進めた。物語は戦前の京都が舞台で、食に関しては京都のしきたりや文化についてが読みどころかと思う。

 

タイムトラベルし祖父の学生時代を体験することで、主人公も幾分変わる。最終的に最後はなんとなくすっと理解できずに終わってしまったのだが、読了後「なんとなくイギリスのドラマで見たことがあるような」な気持ちになった。

 

京都の土地勘がある方ならばきっと楽しく読めるだろう。そういえばしばらく京都に行ってないなあ。ゴールデンウィークは混むだろうか。