Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#509 久々に面白いファンタジーに出会いました~「雲神様の箱」

『雲神様の箱』円堂豆子 著

土雲の一族の神秘。

 

Kindle内にある未読本の中には1巻を買ってみて面白かったら続きを読もうとバラバラとシリーズの1作目だけが存在している。とにかく目についた作品から読んでいくことにしたのだが、この作品はもっともっと早くに読んでおくべきだった!と後悔するほどに面白かった。

 

そもそも私はファンタジーものが大好きで、それは子供の時に楽しんだ児童文学の世界の延長上にあると思っている。主にドイツ、ロシア、イギリス、アイルランドの作品を読んできたが、この頃は日本の作者の作品も好んでよく読んでいた。それなのに本書についてなぜ知らずにいたのかと、もっともっと本屋通いに精を出さねばと決意。

 

先に個人的な感想を書いておきたい。本書は恐らくファンタジーノベルと児童文学のちょうど間にあるように思われる。大人が読んでも楽しめるだろうし、中高生でも内容を理解しつつ楽しめると思う。舞台は日本で、何も古事記日本書紀に通じていなくても「ああ、その時代あたりのお話かな?」と想像しながら読み進めることができるが、古代に造詣の深い方には逆に物足りないかもしれないが、ファンタジーですから!ということを強調しておく。

 

さて、舞台は恐らく今の日本の関西あたりで、滋賀、京都、奈良あたりをぼんやり頭に思い浮かべると話が入ってきやすいようだ。

 

神々が日の本をお作りになり、国は民が増え繁栄の兆しにあった。神々の所作は恵をもたらし、今、その末裔たちが国を司っている。神々が現れた頃、実はとある一族がすでにこの日の本で暮らしていた。名を土雲の一族という。土雲は女系の一族で、巫女が長となり神から授かった使命を果たすべく一族を率いていた。彼らは山の頂に住み、数十年暮らしてはまた別の山へと移っていく。そして彼らの暮らす山の麓は栄え、実りをもたらすと言われている。しかし、その山には決して足を踏み入れてはならぬと固く言われていた。

 

土雲族には掟があり、一族のことは決して外に漏らしてはならないとされている。彼らの暮らす山の頂には桜色の湖があり、そこには山魚様という神が暮らしている。その神を祀り、土雲たちは生きている。この神の存在すら、口に出してはならないものだった。

 

もう一つ、双子は忌であり、後に生まれたものが一族の禍として蔑まされた。主人公のセイレンはまさにその双子の妹であり、女系の祀り人一族の娘であった。例え長の一族とはいえ、双子は忌嫌われるもの。姉の石媛とだけは心を通わせるが、姉の失敗の責任はすべてセイレンに課された。

 

その姉のある行動がセイレンを村から外へと出すきっかけとなる。セイレンは山を下り、湖国の王、雄日子のもとで守り人という役割を与えられる。守り人と聞くと、上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』を想像してしまうのだが、確かにちょっと似たところはあるかもしれない。女性が王を守るというところや、特殊な技能でトラブルを乗り越えていくところなどは共通しているかもしれない。しかしセイレンはまだ娘と言われる年齢で、逆に大人に守られている側面もあるところが大きく異なる点と言えるだろう。

 

セイレンは一族の禍として育てられ、常に一人だった。それが湖国で守り人となることで仲間ができる。一人であればわからなかった他人の気持ちや、人を信じるということ、思いやるということ、助けるということを学んでいく。そしてタイトルの「雲神様の箱」だが、このアイデアは素晴らしい!ものすごく視覚に訴えてくるのでいつかアニメ化または映画化される予感すらある。

 

セイレンだけではなく雄日子王も一つ一つに経験から何かを得ていく様子があるのだが、1巻だけでは雄日子の考えがよくわからない。ということで、どうしても続きが読みたくてたまらなくなってしまった。

 

さて、どうしよう。まだまだ未読の本が山盛りだというのに。あと10巻、未読本を読んでから2巻を購入しよう。今は3巻まで出ているそうなので楽しみ。