Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#571 四国ならありうる!~「鈴の神さま」

『鈴の神さま』知野みさき 著

鈴を守る幼き神。

 

この頃ちょっと喉が痛いとか、体がだるいと「ついに来たか…」と感染の不安に襲われる。ついに周囲でも注意に注意を重ねていた人たちが、夏休みの移動で気が緩んだのか、次々と倒れて行った。初期のような重症状の報道は少なくなったように感じるが、やはり病気は辛いので感染対策を怠らずにいなくては、と気を引き締める。

 

さて、そんな週末、ちょっと体調が優れなかったこともあり家でごろりと横になりながらドラマを見たり、本を読んだりゆったりと過ごしていた。本当ならば紙の本をたくさん読まなくてはならないのだが、やっぱり手軽なKindleを選んでしまう。

 

さて、本書。カナダで時代小説を執筆しておられる著者の現代を舞台にした小説だ。今まで3種類のシリーズものを読んできた。

 

本書は章によって時代の前後はあるものの、せいぜい古くても昭和初期なのでなんとなく想像の及ぶ範囲だろう。舞台は四国で、恐らく香川県ではないかと思う。

 

四国と言えばお遍路さんで有名だが、太古の秘密のような言い伝えが多くあると聞いたことがある。このストーリーも鈴を守る神と地域のふれあいがテーマになっており、アニメやラノベにありそうな人との距離が近く、どこかコミカルで可愛らしさに溢れる神様が主人公だ。

 

1話目に登場する冬弥はピアノが好きな中学生。音楽一家に育ち、本当はコンクールに出る予定だったが指の怪我で断念。気持ちを切り替えるために四国に住む祖父の家で春休みを過ごすこととなる。

 

祖父は高野町というところに住んでいた。人里から少し離れた所に祖父の家はあり、代々受け継がれているものだという。祖父の家の敷地は広く、遠く山側まで伸びている。

 

祖父の家に滞在している時のこと、突然の来客があった。小さな子供で仕立てのよい着物を身に付け、どこか言葉遣いが古めかしい。それが冬弥と鈴の神様の出会いだった。最初は祖父の説明も半信半疑。ところがお付の人の存在や、周りの人には彼らが見えないということに気付き、神様だ!と開眼する。

 

鈴の神様は冬弥の一族が所有するある山の上に住んでいる。山へと続く一本の細い道を登ると、そこに古く小さな神社がある。町の人の信仰もあり、冬弥の一族は私有地にある神社を町の和菓子屋「雛屋」の一族と共に大切に守っていた。ただ、祖父母の時代に東京へ移住した冬弥の母親や冬弥自身はそのことに深く関心を持たずに過ごしていた。

 

冬弥が高野町を訪れた時、新幹線を乗り換え瀬戸大橋を渡っているから、降りた駅は恐らく坂出か高松だろう。高野町はそこからバスで1時間で、商店などのある街から少し距離があるようだ。そして、海の描写は出てこないことから、きっと香川から徳島方面に向かった先に高野町はあるのでは?と想像している。なぜそんなことを考えていたかというと、「行ってみたい」という気持ちがむくむくと湧いてきたからだ。いつか四国をぶらっと旅してみたいと思っているところだったので、なおさら興味が湧いたのかもしれない。

 

一体著者はどんな背景からこの小説を思いついたのだろう。実在しそうな鈴の守り神。人の温かさもさることながら、幼い神様の心根の優しさに引き込まれていく。スピリチュアルすぎず、ファンタジーすぎない読みやすい小説。旅した気分にさせてもらいました。