Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#506 オーブンとかカフェとか~「お江戸甘味処 谷中はつねや 2」

『腕くらべ』倉阪鬼一郎 著

はつねや、2巻目。

 

年度末の最終日。蔓延防止対策が明け、街に人も増え始めているところをみると、在宅勤務から通常勤務となった人も多いのだろう。そういえば最近は電車込んでることが多い。

 

さて、気楽に楽しめそうな本をどんどん読んでいこうと久々にこちらのシリーズを読む。現在4巻目まで出ているが、手持ちは3巻までなのでまずはそこまで読んでみよう。

 


親というか祖母の影響で少しだけ茶道をかじったことがあり、その時に和菓子の美味しさに目覚めた。お菓子が食べたくて通っていたと言っても過言ではないほどで、まさに「開眼」と言う感じだったように思う。それまではお菓子と言えば洋菓子が中心だったし、頂きもののお饅頭とか羊羹などなどは残念ながら子供の目には美味しそうには見えない。ケーキの華やかさに比べ、和菓子の落ち着きがすぎる佇まいはなかなか受け入れられなかった。手を出すのは団子くらいで、焼き菓子なども「おじいさんの味がする!」と桂皮(ニッキ)の香りに顔をしかめていたものだ。

 

それが急に和菓子に目覚め、日本に生まれてよかったわー!とまで言うようになったことは家族にとっても驚きだったようだ。一人で京都に行き、岸朝子さんのマネをして独自ノートなんかも作っていたので結構思い入れは強いのです。

 

よって、本シリーズも和菓子がテーマということで購入したのだが、2巻目ではつねやが腕くらべの催しに出ることになったことでちょっぴり華やかな和菓子の世界となっている。

 

が、ちょっと謎も残るのです。1回戦、お題が与えられ、春をテーマとしたお菓子を漆器につめて持参するのだけれど、はつねやは素朴な手に届きそうな春の様子を作り上げた。そこには桜や川の様子だけではなく、人の姿もお菓子で表現されている、とあった。ふむ。江戸時代に人の形のお菓子と言えばどんなものだろう。人形焼きみたいなものだろうか?だとしたらバランス悪いし埴輪っぽいはず。練きりだとして、リアルすぎても食べるのに困るし、一体どんな風に・・・。とずっと考えてしまった。クリスマスケーキのマジパンとか砂糖菓子で作ったサンタさんみたいな感じだろうか。

 

自然を表す和菓子は多いけれど、人の形となるとまったく想像がつかない。雛人形風なら想像できるけれど、音松が作ったのは農作業をしている人。うーむ。今は食べ物でキャラクターを作るようなものが多いけれど、江戸時代にそれがあったとは想像し難く、とりあえず「和菓子食べたいなー」と思いながら読み続ける。

 

話は変わるが、江戸の時代に作られたお菓子が今もずっとずっと作られているってなんとすごいことだろう。きっと本職の方は江戸の文献などもしっかり学んでおられるのだと思うが、いつかチャンスがあれば江戸の食の指南書のようなものを読んでみたい。京都の老舗だと創業から200年以上経つ和菓子屋も珍しくない。きっと創業時のレシピなど貴重なものがたくさんあるんだろうな。道具一つにしても今や便利な機械が多くあるけれど、江戸時代にはすべて人の力で作っていたはずだ。火加減一つ調節することだって難しかったと思う。昔のお菓子を想像しつつ日本の文化の豊かさに感嘆。

 

さて、はつねやは谷中にあるのだが、今谷根千あたりにもお菓子屋さんがたくさんあるし、昭和初期のころから活躍する名店も多い。4月に入ったら、少しいろいろなところに行ってみたいと思っている。谷根千も久しぶりに行きたい。音松とおはつの様子を読んでいると、なんとなくほっこりしてくる。

 

なのに、今回2か所「これは…」と思う文章があった。

 

天火とは、いまのオーブンのことだ。

いまなら猫カフェだが存外に古いあきないで、江戸の世からすでにあった。

 

うーん。せっかくはつねやの雰囲気に浸っていたのに、なぜ令和の今を持ち出すのか。オーブンとか、カフェとか、異質なものが出て来たことでせっかくの江戸気分が萎んでしまう。というより、この説明は一体だれ徳なんだろう。最後まで読者を江戸にとどめて欲しかった!!!そこがとっても残念。