Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#413 居酒屋から江戸の料理屋へ ~「きよのお江戸料理日記」

『きよのお江戸料理日記』秋川滝美 著

居酒屋ぼったくりの作者の時代お料理小説。

 

 

今年はオリンピックがあったせいか後半の休日が少ない上に、平成では12月の末だった天皇誕生日が令和は2月らしいのでより年末に息をつく暇がない。大掃除も早め早めに対応しなくては。12月23日はぜひ平成の日として公休日にして頂きたいと切に思う。

 

さて、やっと朝晩しっかりと冷えるようになり、芋栗南瓜がおいしい時期となってきた。この週末はBlack Fridayのセールが多く、近くのスーパーでつい!むき甘栗の大袋を買ってしまった次第。今年の秋の栗の和菓子、台風の被害で産地では収穫量の減少や質の低下が見られたそうだ。いつも買っている和菓子屋さんでも「少し酸味があります」と仰っており「お気に召さなければお代はお返しします!」と言われたのだけれど、やはりプロの手にかかると栗はものすごく美味しくて十分満足どころかお代わりしたくなったほどだ。スーパーPBのむき甘栗はたいてい中国産だけれど、そこはスーパーの管理力を信用してのお試し購入である。栗の和菓子は11月いっぱいまでだろうからもう少し秋を満喫したいと思う。

 

甘栗だの和菓子だのを片手に読書となると、やっぱりコーヒーよりほうじ茶か緑茶かと迷うところで、お茶までセットするとやっぱり読むものも日本のものを求めてしまう。ということで、時代小説を読むことにした。本書は最近料理をテーマとした作品をいくつか購入した中の一つ。

 

まだ海外に住んでいた頃、『居酒屋ぼったくり1 (アルファポリスCOMICS)』がめっぽう面白いと聞き、早速取り寄せて読んでみた。たしか11巻までのシリーズのはずだ。両親が営んでいた居酒屋を姉妹が継ぐ話で、日本酒の情報が豊富で前半とても楽しく読んだ。下戸のくせに、なぜか日本酒だけは味が好き。でもおちょこ1杯が精いっぱい。それでも味は大好き。たくさんは飲めないけれど、少しアルコールを入れるホットドリンクは日本酒を使って作ることが多い。おススメはホットレモネード。ホット柚子ネードもおいしい。

 

その「居酒屋ぼったくり」なのだが、実は手元にありつつも9巻の後半あたりで読むのを止めた。理由はテーマが食から色恋に話の軸が移ってしまったからだ。前半ものすごく面白かったので残念ではあったけれど、どうしても読み進める気分になれず、結局帰国の際に人に譲ってしまった。海外で和食がテーマの話を読むと、普段食べられないだけあってものすごく食への情熱が高まる。そのせいか前半部分では日本酒の名前もチェックして、日本酒の一覧の本なんかも買ってしまったほどだ。ところが後半になればなるほど興味が萎んでしまい、そこへタイミング良く他の料理小説を読み始めたこともあって、いつしか小説の存在を忘れてしまっていた。

 

ある日Amazonを徘徊していたら、なんとぼったくりの作者が今度は江戸をテーマに小説を書かれたという。これは単なる思い込みだが、作家さんにはジャンルというものがあり、時代小説と近代が舞台の小説は全く別のジャンルで書き手も異なると思っていた。同じ居酒屋という舞台とはいえ、平成と江戸では全く別の物。一体どんな作品になっているのかというクエスチョンと期待感が高まりドキドキしながら読み始めた。

 

主人公は大阪出身の「きよ」と弟の「清五郎」で、江戸の料理家「千川」で修行を始めた。きよには実は双子の兄がいる。江戸では双子は縁起の悪いもので引き離されることが多かった。ところがきよの両親は手元にきよを置き、一目につかないように育てることにした。二人の実家は油問屋の大店で、使用人にすらきよの存在はほぼ隠された状態だったそうだが、相当大きな家じゃないと無理だろう。表に出ることが許されないきよは、いつしか家の中で料理に楽しみを見出していた。

 

ある日弟の清五郎が不始末をおかし、しばらくの間江戸へ行くこととなった。清五郎一人では心許ないときよも同行する。行き先は父の知人の料理屋できよはたまたまそこで料理を作ることとなり、その腕に注目される。

 

まず、最初にきよが注目されたのは座禅豆。大豆を甘く煮る料理だ。これは家によって味付けも違うだろうけれど、上方と江戸では作り方も異なったらしい。きよの腕もありその豆が与力の目に留まり、そこからきよの料理に注目があつまるようになる。

 

1巻目はきよの生い立ちや料理への思いが語られている。なんとなく「居酒屋ぼったくり」の面影も見え隠れするし、大阪から江戸で料理となると高田郁さんの「みをつくしシリーズ」と設定が重なるところがあるけれど、「みをつくし」ほどしっかりと時代小説風ではなく、さらりと読みやすい文章となっている。この頃は関西の出身という設定でも登場人物は関西弁を話さないのだろうか。新喜劇のようなコテコテの関西弁とは言わずとも、字面からも「ああ、西の人だな」という雰囲気が感じられればと東の人間は勝手に思ってしまう。

 

今は2巻まで出ているようなので続きも読んでみたい。