Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#445 粋な姉妹の江戸の話 ~「世直し小町りんりん」

『世直し小町りんりん』西條奈加 著

女性が活躍する江戸の話。

 

今年も江戸に浸る予定。去年のブラックフライデーの時、西條奈加さんの小説をいくつか購入した。一番最初に読んだ本がお菓子の本で、それ以来楽しく読んでいる。

 

この作品も続編出るといいなあ。

 

さて、本書は主人公が同心の妹と妻という女性が大活躍の作品だ。ものすごく強い!本書は吉川英治文学新人賞を受賞した作品とのこと。確かに江戸が舞台の捕物とは違う世界が広がっている。

 

お蝶の父は同心、母は辰巳芸者。兄とは母親が異なるがとてつもなく可愛がられている。辰巳芸者のきっぱりした性格を引き継いでか、両親が亡くなった後も一人で長屋に暮らし長唄を教えることで暮らしを立てている。義理の姉の沙十は武家の娘で今は同心家を切り盛りしている。

 

父の他界には秘密があった。それがこの本のキーとなる。

 

とにかく登場人物のキャラクターが面白い上に、話の先が全く見えてこないストーリーで一気に最後まで読めてしまう。きっと時代小説を読んだことのない人でも楽しく読めるものに違いない。というか、時代小説、私は「しゃばけシリーズ」と「みをつくしシリーズ」から読み始めたけれど、江戸という「過去」を経験できない今、江戸=ファンタジーと思い始めたことから俄然興味が湧いたので、本書のような作品で面白さを体験すればどんどんハマる人は増えるはず。

 

さて、私が一番好きだったキャラクターは姉の沙十。武家の娘らしい凛とした心に方向音痴という天然っぷり。行くべき方向の全て逆を行くので徒歩10分の距離でも数時間かかる。そして嫁いだ時に実家からついてきた爺やがまたナイス。薙刀の達人である沙十が暴漢に襲われる度に離れたところから拍手喝采。それがまた笑えてくる。

 

お蝶の下町娘として、芸者っぽい気風の良さも魅力的。父親が同心であり、母との再婚を強く望んだものの、辰巳芸者のさっぱりさというか強さというか、母は再婚を選ばず芸者として三味線を弾き続けた。そこには父への愛も、優しさも全てが詰まった結果だと思う。お蝶の心には両親の思いがしっかり引き継がれており、愛されて育ったが故の安定した生き方が見える。周りにいる長屋の友人もみなお蝶の純粋な部分に惹かれて支えながら生きている。

 

そこへ義姉の沙十の柔らかくもあり、地に足の着いた生き方がお蝶の支えにもなっている。二人とも真っすぐ前を見ているような、真摯な生き方が魅力的だった。江戸の女性の魅力は「凛」の一文字に尽きると思う。今の時代にも凛とした女性の粋さが必要!! 

 

ところで長唄について素晴らしい動画を見つけたので貼っておく。