Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#438 お酒が江戸へ届くまでが大変すぎるのです~「下り酒一番 1」

『下り酒1番 1』千野隆司 著

武蔵屋で手代として働く卯吉の活躍。

 

さて、一足先に今日より年末休暇に入った。年休消化といいつつも、本当は一日も早くお休みとって大掃除をしなくては!という切羽詰まった事情もある。さらに今年と言うか来年と言うか、お節も準備したいと思っているので尚更だ。

 

この週末はクリスマスだったこともあり、なんとなく外に出ないで大人しくしていようと断捨離からスタート。Kindleも読み終わった本を整理しなくては目的の本が探せないことになってしまう。そろそろKindle本の整理方法についても検索してみなくては。ということで、こちらも1巻目を買ったまま放置していた作品の一つ、早速読み始めた。

 

著者の作品は今まで2つ読んだ。

 


これで3つ目になるが、今まで読んだものよりも俄然楽しく読めたように思う。どんな展開になるのか全くわからないし、登場人物のキャラクターがより魅力的に感じられた。しかも前2作の無鉄砲な前向きさと明るさに比べ、本作はちょっぴりダーク感が漂っていてより一層大人向けかな?

 

主人公は卯吉という酒屋に勤める手代だ。奉公先の武藏屋は先代が亡くなり、その長男が継いでいる。これが正直使い物にならないどうしようもない人物で、全く店にも出てこない。次男も品川あたりに店を出し、武家から嫁いだ母親に甘やかされて好き勝手に暮らしている。

 

実は卯吉は先代の子だ。妾腹の子とは言え、先代と先代の弟からは可愛がられていたし、卯吉の母が亡くなってからは武蔵屋で暮らしていた。しかし、先代が亡くなってからは他の勤め人よりもひどい待遇ながらも卯吉は懸命に勤めている。世話になった先の番頭や父に対する感謝の思いから、店がどんどん傾いているのがわかっていても逃げ出すつもりはない。

 

とにかく商才のない人間が店を切り盛りしているので、一つのトラブルが莫大なマイナスを産む。よって武蔵屋を潰したいと思えば、小さな仕掛けでも確実に躓かせることができてしまう。このあたりにぐるぐるとダークマターが漂っている風がすごかった。わがままな経営者一家に父の店を潰させたくない卯吉は店に降りかかる悪事を見抜こうと翻弄する。

 

最後までハラハラが続き、ずっと曇り空の下にいるような重い気分が続く小説だが、とにかく卯吉を応援したい気持ちが途絶えない。まるで卯吉と一緒に大川の傍を走っているような気持ちになる。必死に耐える卯吉を見ていると、武蔵屋め!と怒りが募る。

 

ということで、これも2巻へ進まなくては。ところで私は下戸なくせに日本酒の味が好きで、時々気に入ったものを購入している。お正月用に買ったものがそろそろ届くのでこの本を読みながら味わいたい。