Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#423 そうそう、家族ですよね ~「はなの味ごよみ5」

『はなの味ごよみ 5』高田在子 著

はなにとって家族とは。

 

読みだしたら夢中になってしまって、降りる駅まであっという間と思えるほどに没頭してしまった。

 

 

喜楽屋はもともと女将おせいと鬼籍に入った夫が始めた店だった。その頃からおせいを支えてきたのが駿河町にある堺屋の主で、今は店を息子に譲り根岸で気ままな隠居生活を楽しんでいる。おせいのことを実の娘のようにかわいがり、街の人々からの信頼も厚い。そしてどの時代小説を読んでもそうだけれど、大店のご隠居はたいていものすごく勘が良く、聡く、太っ腹の好人物で、愛されキャラ。

 

おせいをご隠居が、はなを弥一郎がお目付け役としてサーポートしているわけだけれど、5巻目にして二人は喜楽屋で顔を合わせる。ご隠居は「喜楽屋に集うものは身内だ」といい、弥一郎に困りごとの援助を頼んだりと、客同士の縁が深まっている。

 

ところで、時代小説を読んでいるとそんなに歴史に関心があるわけではないのに、無性に江戸について学びたくなる。江戸の文化や風習など「生活」に根付く部分が知りたい。例えば、ご隠居の店のある駿河町は、調べてみると今の日本橋の室町1丁目あたりで、名前の由来は当時そこからの富士山の眺望が最も美しいとされていたことにあるらしい。駿河は今の静岡のことでそれにあやかってのことなんだとか。時代小説、勉強になるなあ。

 

さて、今回も喜楽屋ではいろんなことが起きるのだけれど、5冊目はちょっとジャブな予感がしている。というのも、騒動を起こすと言われている主人公のはなは大人しく、喜楽屋の客が持ち込むちょっとしたトラブルしか起こらないから。そして、キーワードが「家族」になっていて、これはきっとはなと良太の関係において「次にでかいの来るぞ」と読者に予想させるものがふんわりと漂っていて、より一層ワクワク感が止まらなくなってしまった。

 

ところで、この小説を読み始めた理由は料理が絡んでいるであろうと思ったからで、料理人が切磋琢磨するとか、料理屋を盛り上げるための話なのかと想像していた。実際に読み始めるとおせいは料理人としてすでに自分の味を確立していて、喜楽屋で実現しているし店も固定客があり繁盛している。人気料理はふろふき大根で、出てくる料理も他の料理本とあまり被らない。本来は江戸の人情と愛情がメインテーマであることが2巻目あたりではっきりしてくるのだけれど、そこへ塩梅よく投入される喜楽屋の料理の魅力がほっこりさに味を添えている。

 

今回も弥一郎ははなが武家に嫁ぐのは無理だという。「おまえは武家の女にはなれぬ」とまではっきりと。一方で良太は以前よりも喜楽屋を訪れはなの前に姿を現す。いつも変装して店ののれんを下すはなの元へやってくる。今回は七夕の話もあり、二人の接点が増えている。今後どうなっていくのかが楽しみすぎて、読書がスピードアップ中。