Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#425 江戸版「高慢と偏見」な気分!!!~「はなの味ごよみ 6」

『はなの味ごよみ 6』高田在子 著 

弥一郎!!!

 

この頃はこの本を読む以外の楽しみはない!と断言できるほどにハマってしまった時代小説の6巻目。これが本当に本当に何度も読み返したくなる至極の一冊だった。ああ、これはもう心がっしり掴まれてしまったわ。

 

 

5巻目はちょうど七夕の時期で、6巻目は盆入りの季節となった。この小説はストーリーの進行にそれほどの時を重ねておらず、まだはなが喜楽屋に来てから1年も経っていない。冬に来たから、ちょうど半年というところだろうか。この所神田に居ついていたご隠居も、亡き妻を迎えるからとお盆には根岸に帰るという。

 

5巻でご隠居と弥一郎は顔合わせをしていて、喜楽屋で出会った時は酒を酌み交わす関係になっている。根岸に帰るにあたり、これからも喜楽屋を支えて欲しい、今後もよろしくと頭を下げた。さりげなく御薬園の話を出し、おせいだけではなく、はなのことも。自分は役に立たない断ろうとする弥一郎に対し、「岡田様さまにしかできぬご助力の方法が、きっとあるはずでございます。」とご隠居が答えるのを見るに、やっぱり弥一郎もこれからキーパーソンとなるに違いない。というより、キャラ的にこういう武士、ステキすぎるし好きすぎるので大いに登場して欲しいという気持ちが前に立ってしまう。

 

6巻は見どころ読みどころがいっぱいで、心温まる話からスタートする。達平という出羽から来た人形師が仲間と共に喜楽屋を訪れた。出羽は今でいう秋田や山形のあたりのこと。2年前に江戸に出てきて慣れない仕事をしていたのだが、周囲の親切さになにかお返しがしたいと出羽の村で作っていた木彫りの人形を作り、子供たちに与えていた。その人形が今の親方の目に留まり、人形師として住み込みで修行を始めることになったという。

 

訛りも抜けず、ともに来た仲間からは邪魔者にされており兄弟子たちからはいじめられているのだが、当の本人は純朴すぎてか全く気にもしていない。それがまた兄弟子たちを怒らせるようで、喜楽屋ではついに兄弟子の怒りが爆発。ところがたまたま奥で食事をしていたのがご隠居と弥一郎で、すぐに兄弟子たちを追い出してしまう。一人残された達平はご隠居たちの席に加わり、身の上を語る。

 

達平の暮らした北国は冬は厳しい。人間は所詮自然に打ち勝つことはできないから、「やり過ごすことを学んだ」という。達平の言葉は深い。どんなに嫌味を言われても、ひとつ屋根の下に住む仲間だと言い、いじめられている言葉の中に人形作りに役立つことばもあると、心配して探しにきた親方にも大丈夫だと笑ってみせる。彼らの作る人形は亡くなった家族を偲ぶためのものが多く、喜ばれるものを作りたいという達平の言葉は胸に染みるものがあった。

 

ところで、達平の故郷にはだまこ鍋というのがあり、それが食べたいと言う。達平の説明を聞くと、米を潰して団子のように丸めて鍋の具として食べるものだという。きりたんぽっぽい印象だけれど、調べてみるとちょっと違うらしい。そして故郷の味といえばわらびだという。山菜、この作品ですっかり秋田のイメージとなっているので出羽出身の達平が言うのには納得。

 

 

さて、ここからがメイン!私の好きな小説の一つにJane Austineの『Pride and Prejudice (Penguin Classics)』がある。ものすごく切ない気分になる上に、主人公のDarcyは理想の男性像といっても過言ではない。気難しそうで人を寄せ付けないので冷徹そうな印象を与えてしまうのだけれど、本当はものすごく誠実でものすごく温かい人柄。でもそんな本当の姿を知る人はとても極少しの身内だけで、その姿が明るみになっていくところが美しすぎていつもため息が出る。ちなみに、「ブリジットジョーンズの日記」にもDarcyそっくりなキャラが出る。映画版ではColin Firthが演じていて、彼はBBCのドラマでDarcyを演じているので、一部のJane Austineファンは「きゃあああ!」となったはず。彼もイメージぴったりすぎてしばらくの間Colin好きが止まらなかったことがあったなあ。

 

で、なぜ『高慢と偏見』か。まさに今回の展開が「それ!」だった。もうメロメロですよ、この展開に!!!思わず「来た、コレ!Mr. Darcyじゃん!」と一人で「おおおおおおおおおおおおおお!」と声出しながら読んでましたから。

 

そもそも、こはくの様子だったり、今までの流れ上、こうなるだろうなーという伏線はあった。そしてこの章の話の展開上、絶対「来る!」と思っていたところへ読み進めるうちに確信に変わり、ついに「来た!!!!!!!!」とファン歓喜な流れになるのだけれど、まさかこんなにDarcy風だとは!ああ、思い出すだけで胸アツです。きっと6巻だけ何度も読むだろうからメモは残さないけれど、これはもう最後までハラハラが止まらないに違いない。

 

とりあえず、手持ちあと3冊。どんな展開になるのか気が抜けません!