『ヘラクレスの冒険』アガサ・クリスティー著
短編。
ようやく27冊目。地道に少しずつ読み進めようと思っている。どういうわけか、寒くなって来るとヨーロッパを欲するようになる。この頃はやたらとフランスのドラマや映画を見たり、音楽もほぼクラシックかフランスのものを聴いている。食べるものも洋食がぐっと増えるし、チーズが恋しい。
さて、本作は短編小説でポアロの名前のエルキュールがヘラクレスに由来することから、ヘラクレスの12の戦績を引き合いにテーマが定められている。基本情報はこちら。
Title: The Labours of Hercules
Publication date: 1947
Translator: 田中一江
そもそも、なぜヘラクレスが出て来たかというと、ポアロがまた引退しちゃおうかなーみたいなことを警部たちに漏らし、最後に自分の名前がヘラクレスから来てるんだからヘラクレス級の調査をしてからにしよう、という単なる思い付きによる流れとなっている。ヘラクレスの功績の中にはよくわからない動物とか怪物が出てくるのだけれど、ちょうどよくそれを妄想させる事件が起こるのがポアロらしい。
今回の翻訳者は田中一江さんで、1953年生まれで東京女子大学文学部卒。Wikipediaに面白い一言がある。
「大学卒業後、数年間の充電期間の最中、ジャッキー・チェンの『酔拳』に感銘を受け、翻訳家を志す。」
私は上の文章に感銘を受けた!いや、確かにダイナミックでありつつも読みやすかったかも。それにしても「酔拳」を見て翻訳家を目指すというのがもうツボすぎる!!!
内容はやはり短編なのでライト感はあるものの、丁度良い長さで淡々と進んでいくのでかなり読みやすい。翻訳もテンポ良いのですっと流れに乗れると思う。舞台があちこちに飛ぶのがポアロの行動力を映し出しているポイントになるが、この頃はめっきりヨーロッパから出ることがないようだ。本書でもほぼイギリスにいて、スイス、パリ、イタリア、アイルランドをちらっと訪問している。
ストーリーが短いのでハラハラ感は欠けるとはいえ、やっぱり犯人像は最後まで見えてこない。そのあたりはかなり手が込んだ仕掛けになっているので、読み甲斐はある。サクサク読めるのでかなり気分転換になったかも。
評価:☆☆☆
おもしろさ:☆☆☆
読みやすさ:☆☆☆☆