Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#400 江戸風おいしいだけでなく体に良いごはん ~「お江戸やすらぎ飯」

『お江戸やすらぎ飯 1』鷹井伶 著

食育のお江戸版。

 

この頃アマゾンのセールが続いている。日頃「これはすぐに読みたい!」と思うものは即買いするが、気になる作品ではあるけれど急を要さないものは欲しい物リストにどんどん放りこんでいる。セールが始まるとまずはこのリストの中から価格ダウンしたものを吟味して購入するのだが、本書もそんな作品のうちの一つ。

 

現在は3冊シリーズとして出ているとのこと。まずはお試しの1冊目だったが、もしまたセールがあれば続編も購入したいなと思った。

 

江戸は文化12年、舞台は吉原。佐保は火事で両親を失い、迷い込んだ吉原の大見世である玉屋の娘として育てられた。この火事は恐らく「文化の大火」のことで、この時に子供だったというのならば家斉の時代。佐保は火事の前のことをあまりはっきり覚えてはいない。母が料理をしていたこと、父が草花を育てていたことを夢に見るのだが、その顔は年々薄らいでいく。

 

両親の影響だろう。佐保は料理を得意とし、その人に適した食べ物がふと頭に浮かんでくるという特技があった。吉原でも台所を預かり、花魁や店のものから体調の不具合を聞いては適した料理で体を癒していた。

 

そんな佐保も、いずれはお座敷へ上がることになる。娘として育てられたものの、主の山三郎の娘として育ててもらった恩義を返すには花魁になるべきだ。それが佐保が長く考えてきた生きる道だった。

 

一方、浅草向柳原の医学館。多紀家は代々医療の道を授かる家で、御匙として要人の治療に当たる他、医学の道を教えていた。現在の当主の元胤は、定期的に吉原での健康管理を行っている。5男で末っ子の元堅はまだまだひよっこ医師というところだが、兄の指示に従いともに吉原へついて行く。行き先は佐保の働く遊郭だった。

 

恐らく元胤は佐保の特技を知っていたこととは思うが、この出会いで元堅は女性に囲まれてしゃっくりが止まらなくなる。元堅といえば、とにかく食への関心が高く大好物の大福を食べてばかり。兄のように見目秀麗というわけでもなく、愛嬌のあるキャラクターである。

 

ある日、父の代から長く医学館で働く瑞峰が急遽玉屋へ呼び出された。山三郎の一人息子である颯太が倒れたという。治療にあたると、江戸患いであることがわかる。今でいうところの脚気のことで、当時は命に係わる病気だった。瑞峰の治療と佐保の料理で颯太はじき回復するのだが、その御礼もかねて八朔の日に瑞峰は玉屋の招待を受けた。

 

そこで、思いがけない流れとなり佐保は医学館で料理人として生きることとなった。颯太が「ここで花魁になるよりも、今すぐここから出て料理人になれ」と切り出し、佐保の特技に関心のあった瑞峰が佐保を預かることとなる。

 

ストーリーは全体的に漢方というのだろうか。食で体を癒す話がつづれられている。ショウガや葛が体を温めるとか、きくらげが体を潤すなど、どこかで聞いたことのある内容が多いとは思うが、佐保が料理を作っていくようすは読んでいて楽しい。最後にはこんな感じで2,3のレシピがある。

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