#388 ポアロシリーズ第25弾~「五匹の子豚」
『五匹の子豚』アガサ・クリスティー著
ポアロシリーズ第25弾。
週明けから寒くなるとのニュースに週末は衣替えをした。今日からはすっかり長袖でそろそろコート類も引き取りに行かねば。すでに北海道では初雪を観測したと言うし、これからは一雨ごとに寒さが増して冬になるんだろうな。
さて、やっと25冊目のアガサ作品だが、本作は今までとは違うアプローチな上に、最後まで謎が謎を呼び疑問が最大限に膨らんでいくような内容だった。
基本情報はこちら。
Title: Five Little Pigs
Publication date: January 1943
Translator: 山本やよい
まず、いつものように導入部でポアロのもとに事件が入ってくる。今回は若い娘で、16年前に亡くなった母の無実を晴らしたいという。娘の父親は当時有名な画家で、16年前に毒殺された。その犯人として母がとらえられたのだが獄中で命を落とす。母は亡くなる前にカナダの親類に預けられた一人娘に手紙を残した。自分はやっていない、と。
託されたポアロは過去の事件でありながらも、このような状況からの調査はポアロでなくてはできないと懇願され、気分良く引き受けることに。ここから他の登場人物へのヒアリング調査を開始、隠された謎はなかなか見えてこない。
当時の捜査にあたった者、裁判にあたった者、そして画家と共にいた者、すでに16年の時が流れ、当時まだ幼かった娘も20歳となり結婚を考える歳となった。過去の会話を思い出し、加害者被害者の人柄から解いていくポアロの戦法は今回は見事以外の何物でもない。
翻訳家の山本やよいさんは、「オリエント急行の殺人」の翻訳も手掛けており、とにかくスムーズ、それぞれの人柄が浮かび上がってくるような名訳だった。読みやすいだけではなく、違和感を感じる瞬間が一つも無かったように思う。
タイトルの5匹の子豚とはマザーグースの童謡にあり、「愛国殺人」と同じ様に歌詞がそれぞれの賞のタイトルとなっている。この曲の最後の歌詞がI can't find my way home.と、家に帰る道がわからず迷子になってしまっている様子で、確かにぴったりな小説だった。事件に関する情報の鍵となるものはなかなか容易に開示されない。その出て来るタイミングも量も何から何まで絶妙すぎてあっという間に物語に取り込まれてしまう。
とにかく面白い!目の前にさーっと風景が浮かんでくるような圧倒的な描写も読みごたえがある。確実にお気に入りベスト3に入ると思う素晴らしい推理小説。
評価:☆☆☆☆☆
おもしろさ:☆☆☆☆☆
読みやすさ:☆☆☆☆☆