Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#331 秘境、なるほどな(笑)

 『最後の秘境 東京藝大ー天才たちのカオスな日常 1巻』土岐蔦子著

上野にある秘境。

 

 

たまたまネットで情報を探している時にみつけた一冊。本当は書籍で読もうと思ったんだけれどマンガもあるとのことで、しかも1巻目はKindle Unlimitedでも読めるとあり早速読んでみた。

 

芸事の才能のある人は心底羨ましい。絵が上手とか、楽器の演奏ができるとか、憧れ以外の何物でもない。本書は著者の奥様が藝大生ということで、その奇妙な生活というか、自由さというか、非凡さについて書いたもので、マンガにされた著者も藝大卒らしい。

 

偏見になりかねないけれど、藝大生というとやっぱりどこか普通と違う独特の個性をお持ちだろうというイメージがある。唯一無二感があって、個性が輝き、一般人の社会性とは別の基準で生活しておられるような、とにかくどこか「すごい」人たちの集団、そんなぼんやりとしたイメージを誰もが持っているに違いない。身近におられる奥様が藝大生である原作者にとってはすでにそれが普通になのだろうけれど、芸術の世界から遠いものには驚きなことががくさんあった。

 

まず、藝大には美術を学ぶ「美校」と音楽を学ぶ「音校」に分かれているということはざっくりと知ってはいたけれど、それぞれの学科がかなり細かくわかれていて芸術分野のすそ野の広さを感じられる。そもそも「絵」とは言っても洋風和風とあるようだし、使う絵具も異なるらしい。きっちりと流派が分かれているような印象だ。

 

そして、美術は結構な機械を使っていること。考えればわかることなのだけれど、木彫りにしても材料の木材がなくてはならず、それを切るにはチェーンソーなどの機材が必要だ。木ならまだ優しいほうで、鉄材など鉄工所に置いてあるような機械を使っている。

 

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なんかもう視点も独特だし。

 

芸術家には五感で美をキャッチするようなところがある気もした。受験の話が結構でてくるのだが、その受験自体もかなりトリッキーで、絵を描いて提出するにしても受験なのに野外に出るなど日本とは思えない自由さに溢れている。

 

いわゆる天才と呼ばれる人たちの一面に触れられるような作品で、「どうして藝大に?」と学生に直にインタビューした内容がベースとなっているので信憑性もある。書籍のほうは少し古い内容のようだけれど、マンガは割と最近でとても読みやすい。

 

若いうちに自分の才能を信じて伸ばせる環境というのは羨ましいと思った。