『大奥1~19』よしながふみ著
徳川の御代、赤顔疱瘡が男子を襲い、女人が将軍の座に。
緊急事態宣言の延長により在宅勤務も伸びた。職種によって在宅勤務もままならず、常に人と接する環境で働いている方も多いだろう。自粛により営業が儘ならない企業もある中、在宅勤務、最高!とか言ってはいけないのだけれど、やはり在宅勤務は精神衛生上、非常にプラスになっていると思う(私には)。
先月Amazonのポイント50%還元キャンペーンで大量にマンガを購入したのだが、期間ぎりぎりになりこの本を追加で購入。よしながふみさんの作品には食べ物がテーマになっているものが多くいくつか読んではいたのだけれど、どうもBL的な内容になると興味がそれるというか、長く読んでいられないというか、読み疲れてしまう。
この作品はずっと話題になっていたのでいつかは読みたいとは思っていたけれど、男性大奥という前情報にBL要素が多そうな気がしてなかなか手が出ずにいた。50%というチャンスがなくてはきっと購入には至らなかっただろう。まずは1巻購入して内容をちらっと把握し、次に続けて3巻購入した段階で「これは買いだ!」と残りを一気に購入。一冊一冊がとても深く、他のマンガのようにさらっと読み進めることができない。小説を読むようにじっくり読まざるを得ないので、19巻完読するのに結構時間がかかる。
ストーリーは三代将軍徳川家光の御代から始まる。突然若年男子にのみ罹る病気が流行する。風疹のように顔に疱瘡ができ、熱と痛みであっという間に死に至る。それがじわじわと日本に広がり将軍の住む江戸城にまで到達した。
そうではなくても江戸時代は病を治すすべがなく、子供の命は7歳まで生きることすら難しかった。将軍家の跡取りも赤顔疱瘡に命を落とす。そこで病が治まるまでの臨時の対策として女性の将軍が立てられる。外面的には男性名を名乗っているが、政を司るものも女性となる。
次々の女性が後を継ぐ中、十代家治(女)を支えた田沼意次(女)老中が赤顔疱瘡の治療法を見つけることに人生を注いだ。長崎からオランダ語のできる蘭医者を江戸に呼び、大奥で研究を続ける。その研究が功を奏し、江戸の男子の命が救われていく。
最終巻の19巻では大政奉還、そして徳川家が江戸城を去り維新そして明治へと日本が大きく姿を変えたところで物語は終わる。
完全にフィクションのなのだけれど実在の人物が登場する。そこがリアルさを醸し出し、読んでいるうちにあたかも本当にあったことのような気がしてしまう。それぞれの将軍の正確も教科書で学んだような個性が生かされていてとても面白い。
肝心の男女が逆になっているという設定だがBL的なものもなく、歴史マンガを読んでいるかのような気分になる。絵も美しく、日本家屋の背景が素晴らしい。将軍は権力を持っていつつも孤独である。信じられる者はほんの一部で、婚姻もすべて政略的なもの。どこに心の支えを置くことができるのだろう。
子供との別れ、将軍の薨去、政治の流れなど思わず涙してしまうところも多く、徳川の歴史にも関心を持たずにはいられない。