Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#329 暑い日にはやっぱり推理小説ですね、ということで第4弾

 『ビッグ4』アガサ・クリスティー 著

ポアロシリーズ第4弾。

 

梅雨あけ早々30度超えの日々が続いているのに、暑さを利用した代謝アップを心がけているのに、なぜか太るばかりの今日この頃。果物の食べすぎだろうか。果物と言えば、私はデラウェアが大好きで夏になったら毎日のようにぶどうを食べていた。このデラウェアが海外ではなかなかお目にかかれない。デラウェアというのは調べてみるとアメリカ産のぶどうで、デラウェア州ではなくオハイオ州デラウェアが産地らしい。アメリカでは普通に売っている種類なんだろうか。そしてこのデラウェアは糖度が高いので糖質制限などの食事制限には著しく向かないタイプの果物と言うことになる。果物はシーズンが決まっていて年中食べられるものではないせいか旬の時期に食べておかなくてはという意識が働きすぎるのかもしれない。今週はデラウェアを少な目に、その代わりに桃とキウイを食べている。

 

さて、推理小説の夏、アガサの夏を満喫している2021年。オリンピックがスタートしたというのにスポーツニュースはチェックしていてもゲームまではあまり見ないでいる。でもやっぱりスポーツ選手は美しく、一度見始めると止まらなくて、ストイックにひたむきに自分の全てを傾けることができる精神美にもとてつもなく惹かれてしまう。しかし、私はスポーツはできないし一生かけて頑張り続けているものもないけれど、この夏はクリスティ文庫を読み上げる!という使命がある、と思うことにした。クリスティ文庫を読むにあたり、順番はこちらの本に従っている。

 


一冊読み終えたらガイドブックの内容をチェックし、自分の感想と照らし合わせて1冊まるまる消化し楽しんでから、次に読む本のタイトルをチェックしている。Kindleで読んでいるのだけれど、こんな感じの構成になっている。

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タイトルの横に著者の感想が書かれているのだけれど、この本に限っては評価も低く、「同じ作家とは思えない」とのコメントが。次に読む本のタイトルのみをチェックして次の作品を読み始めるのだけれど、今回はこれが目に入ってしまって読む前から期待感は低めだった。そうか、これはあんまりなのかもなーという偏見を持ちながら読んでいたのでなんとなく読む速度も遅くなってしまったように思う。

 

まず、基本情報を。

Title: The Big Four

Published: January  1927

Translator: 中村妙子

 

とてもとても有名な中村妙子さんの翻訳。思った通りに読みやすく、イギリスの背景にもお詳しいという思いがあるせいか、翻訳家のお名前をみてテンションがあがった。

 

ところで、本書には訳書あとがきがあったのだけれど、どうやらこの作品が世に出る直前、アガサの失踪事件というのがあったらしい。夫の不貞に傷ついたアガサが11日間行方が分からなくなったというもので、前作で一気に人気作家となったせいでこの失踪事件は大々的に報道されてしまったらしい。実際は親戚の家にいたとのことだけれど、翌年には離婚。夫は愛人と再婚したようだ。

 

そんな辛い心境の中で書き上げた作品というのだろうか、ガイドブックは酷評している。まず、ビッグ4という悪の組織があり、それにまつわる短編を後ほどまとめたのが本書とのこと。確かに短編もそれぞれ曖昧な終わり方になっているし、読んでいる間に「このシチュエーションどこかであったな」と思えるようなものがいくつか出てくる。これはシャーロックのドラマで見たような、日本の2時間もので見たような、とうっすら既視感を感じつつも最後まで読み進めたのだけれど、終わり方も「これ、まだ続きある?」な微妙さ。確かに全体的にハリウッドのB級映画的なのだ。

 

ガイドブックの最後の部分、これがしっくりくる。

かつて ロナルド・ノックス は「 探偵小説 十戒」 の なか に、「 中国人 を 登場 さ せ ては なら ない」 という 項目 を おい た。 なぜ、 こんな 妙 な 項目 を 設け た のか、『 ビッグ 4』 を 読め ば 腑 に 落ちる。「 中国人」 という もの が、 当時 どんな 文学的 小道具 だっ た のかが よく わかる から だ。「 噂 は 聞く けど 見 た こと の ない スゴ そう な 異国 の 人間 たち」。 それ が 当時 の 中国人 で あり、 そういう ツール を 安易 に 使っ て 物語 を つくる と、『 ビッグ 4』 の よう な 大 惨事 が 引き起こさ れる わけ で ある( いま の 欧米 で いう「 ニンジャ」 に 近い か)。   エンタテインメント 小説 の 研究 者 以外 は、『 ビッグ 4』 を 読む 必要 は ない。 単に 出来 が 悪い のみ なら ず、 この 小説 の 消費期限 は、 決定的 に 切れてしまっているからだ。

 

ビッグ4は国際的組織で、アメリカ人、フランス人、中国人が登場する。その不思議の役どころが中国人にこれでもか!という風に詰め込まれている。今やネットがあるので中国とヨーロッパの距離は縮まっているとはいえ、それでも今も謎の国なのは変わらない。20世紀初頭ならばもっともっと不思議は深く、謎どころか良し悪しの判断すらつかなかったと思う。中国がやたらと出てくるせいか、うさんくささがものすのすごい。そのくらい、アガサのプライベートのショックは大きかったんだろうなと思う。

 

映画化するなら、きっと昔は有名だったけれど今は落ち目の俳優さんが登場しそうな感じ。これは翻訳の上手さを愉しむ一冊のような気がした。

 

評価:☆☆

おもしろさ:☆☆

読みやすさ:☆☆☆☆