Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#324 古典推理小説を楽しむ夏、1段目です!

 『スタイルズ荘の怪事件』アガサ・クリスティー

ポアロシリーズ第1弾。

 

この夏、アガサクリスティーの作品を読むことに決めた。この間のAmazonセール時に早川文庫のクリスティー文庫作品を購入しすでに準備は万端。基準はクリスティー文庫を1から順番に読んでいくという流れで、ざっと書籍数を見ても完読するまでには数か月かかるのかなーという感じ。アガサだけでも冊数が多いためカテゴリーに早速「推理小説」と「アガサ・クリスティー」を設けてみた。

 

さて、初めて読むアガサ作品だけれども、アガサを読んでいる間は本国でのタイトルや出版日などの基本情報や翻訳家さんにも注目したいと思っている。

 

Title: The Mysterious Affair at Styles

Publication date: Octover 1920 

Translater: 矢沢聖子

 

さて、本作品の巻頭にはMathew Prichard氏による「スタイルズ荘の怪人」によせてという文章がある。

 

一 九 二 〇 年 は 推理小説 の 創作 にとって きわめて 重要 な 年 でし た。 アガサ・クリスティー の 本 が 初めて イギリス で 出版 さ れ、 この 種 の フィクション に 一 時代 を 画し た の です。 アガサ・クリスティー は 一 九 二 〇 年 から だいたい 一 九 七 〇 年 ごろ までに 八十 篇 近い 長篇 小説 を 書き まし た が、 これ は その 最初 の 作品 でし た。 アガサ・クリスティー が 二十世紀 で もっとも 創作 力 豊か な 作家 で ある こと は 広く 認め られる ところ でしょ う が、 そもそも 彼女 が どんな きっかけ で 小説 を 書く よう に なっ た のか、 興味 を いだか れる 読者 も 少なく ない でしょ う。 事 の 起こり は インフルエンザ でし た。『 スタイルズ 荘 の 怪 事件』 が 出版 さ れる 十 二 年 ほど 前、 アガサ は 病床 で もう 読む 本 が なくなっ た と 母 に 訴え た の です。「 それなら、 自分 で 書い て み たら」 と 彼女 の 母 は 答え まし た。 その 結果、 アガサ 自身 に よれ ば、 ぱっと し ない、 どちら かと いえ ば 退屈 な 数 篇 の ロマンス 小説 が つくら れ まし た。 その後、 第一次世界大戦 中 に 病院 の 薬局 で 働い た 経験 に 触発 さ れ、 また、 悪 や 犯罪 や 人間 の 本性 に 関心 が あっ た こと から、 彼女 の 最初 の ミステリ『 スタイルズ 荘』 が 生まれ た の です。 多大 な 努力 と 決意 と 集中 力 を 傾け、 執筆 に 専念 する ため に しばらく 家 を 離れ て 書きあげ た 原稿 は 結局 四つ か 五つ の 出版社 から 送り返さ れ て しまい まし た。 しかし、 ついに ボドリー・ヘッド 社 が『 スタイルズ 荘』 の 出版 を 承諾 し た の でし た。 アガサ は 大いに 喜ん だ でしょ う が、 同時に いささか びっくり し た こと でしょ う。 こうして、 作家 として の 道 が 開か れ、 今日 に 至る まで 無数 の 読者 に かぎり ない 楽しみ を 提供 する こと に なっ た の です。

 

プリチャード氏はアガサの娘ロザリンドの息子さんだそうで、アガサ・クリスティー社の会長を務めておられるらしい。検索したら動画もあった。



読む本が無くなったので書き始めた作品が本書で、しかも長編で、アガサが20代後半に書かれたものとのこと。Amazonの内容によると、クリスティー文庫の場合の本作品(多分文庫本)の長さは361ページだそう。Kindleだとフォントの大きさが変更できるため、ページ数よりも「今、全体の何%を読んだ」という感じで読書計画を立てるようになった。本当はじっくり落ち着いて一気に読みたかったのだけれど、どうしても途切れ途切れの読書になってしまい、合わせると多分7時間くらい?で完読できたと思う。至福のアガサ1冊目。

 

アガサ作品の中で主人公として有名なのは「ポアロ」と「ミス・マープル」でBBCなどでドラマ化されていることから、冒頭の登場人物の紹介で「これはポアロシリーズだな!」とすぐにわかった。

 

さて、第1段目のポアロシリーズ、主役は2人いる。

 

Hercule Poirot(エルキュール・ポアロ

この方が主人公で次々と問題を解決していく。元ベルギーの警察官で、今は退官し探偵として活躍中。小柄で緑の目で身だしなみを非常に気にする紳士。たまに没頭しすぎて変な行動をとったりする。

 

Arthur Hastings(アーサー・ヘイスティングズ

ポアロの友人。第一次大戦時に負傷により予備役についている。結構惚れやすい系。美人を見るとすぐに心奪われがち。彼が語り手となりストーリーが進む。

 

イギリス推理小説の古典であるコナン・ドイルシャーロック・ホームズのような探偵になりたい!とヘイスティングズが語っているところによると、やはり当時のイギリスの皆さんは影響を受けていたんだろうなと思う。しかしもちろんヘイスティングズがシャーロックの役割を担うことはなく、むしろワトソンほどにも役立ってないという面白さもあり、ドイルへ敬意を感じたりもした。ポアロヘイスティングズだが、シャーロックとワトソンの関係とも異なる微妙なバランスで事件を解決へと導いていく。共通点をあえて挙げるのであれば、シャーロックにしてもポアロにしても独特なエキセントリックさがあり、もしかすると読者はそういう奇妙なところに賢さなどの非凡さを見出し奇抜なストーリーを求めているのかも、と考えられなくもない。

 

今回はイギリスのエセックスにある友人宅を訪れていたヘイスティングズだが、そこで偶然にも殺人事件が起こってしまう。ヘイスティングズの友人がスタイルズ荘の所有者で、ポアロはたまたまベルギーの友人とエセックスを訪れており、ばったりヘイスティングズに再開する。ポアロの事件を解決するすご腕を説明し、地元警察と強力しながらも真相を暴いていくという内容だ。

 

今回の翻訳者は矢沢聖子さんという方で、調べてみると本作以外にも多くの推理小説英米文学、自己啓発書などが上がってきた。そのほかのパーソナルデータとしては1951年生まれ、津田塾大学学芸部卒、英米文学翻訳家程度しかヒットしてこない。

 

主人公のポアロがベルギー人でフランス語を母国語としていることから、ちょっとしたフランス語が頻繁に登場する。矢沢さんの翻訳はポワロの気品も上手に表現されているし、凄腕の警察官であり今は探偵でちょっと変わり者という気質までも見事に表現されていたと思う。また、ヘイスティングズが軍人という立場でありながら、美しい女性に惹かれたり、ポアロの推理の過程で深みに達せずにいる場面などもキャラクターの若者らしい軽さが見られて面白かった。

 

そのほか登場する人物もそれぞれの「格」がしっかり伝わり、最後まで違和感なく読むことができた。ストーリー自体の面白さもあるけれど、翻訳がスムーズであったことも楽しみを倍増させた理由かと思う。ところで、検索してみるとポワロという表記も出てくる。1冊目の矢沢さんの訳ではポアロとなっているのでここではポアロで統一したい。

 

アガサシリーズについては個人の評価も加えておきたいと思う。5点満点で全体的な満足度、どのくらい楽しく読めたか、翻訳は読みやすかったかを記録したいと思う。

 

評価:★★★★

おもしろさ:★★★★

読みやすさ:★★★★