Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#308 ワークライフバランスを求める権利、あるはずですよね!

 『わたし、定時で帰ります。』朱野帰子

IT企業に変革あるか!?

 

 

キャンペーン期間に登録したKindle Unlimited。今月一杯までが月額99円のキャンペーン期間で来月は解約しようと思っている。読もうと思って購入してある本が何か月分にもなっているので、ひとまず今月一杯で少しお休みするつもり。それまでにKindle Unlimitedの中から読みたかった小説をいくつか読むことにした。

 

この作品はドラマにもなっていたそうで、IT企業での働き方がテーマとなっている。主人公の結衣は大卒でこの会社に入社、その後定時に帰宅することをポリシーとして10年ほど勤めてきた。IT企業はスタートアップ当時は数人でも、破竹の勢いで大成長する企業もある。結衣の会社も成長にあたりどんどんと社員数も増えた。社長はもともと働きやすい環境作りに力を入れてきたのだが、中途採用社員など外からの要素が入り込むことで、どんどんと残業が当たり前の環境になってしまっている。

 

しかし結衣は定時に帰宅することを守ってきた。理由はバブル期の日本の企業は週6日勤務でとにかく働いた。家に帰ることもなく、週末も休まずに働いた。そのおかげで国は大きく成長した。しかしその頃に幼少期を過ごした結衣には、いつも帰ってこない父親に会いたくて心を痛める思い出が強い。父親のことを忘れないようにと母親は父親の写真をテレビの上に置き、「遺影」と呼んでいた。

 

働くことで守れるものと守れないものがある。結衣は会社のために死ぬほど尽くすというのは何か違うという気持ちがあった。どうすれば残業せずに家に帰ることができるのか、そんな会社はあるのだろうかと考えていた。商学部に進むも、会社勤めの経験のない研究者でしかない教授陣も結衣の質問には答えてくれなかった。就活の時、今の会社のみがワークライフバランスにこだわる結衣を受け入れてくれた。

 

会社には残業したがる人がいる。自分の居場所を求めていたり、残業することで周囲に頑張ってるアピールをしていたり、認めて欲しい思いを残業に込めたり、仕事中毒になっていたり、人とのコミュニケーションを求めたり。結衣はそれでも残業は拒んでいた。ところが、結衣はあるプロジェクトを一つ任されることになる。本当は断ろうと思ったのだが、思わず「やります」と答えていた。無理な仕事を無理な価格で受けてきた上司。無能な上司。しかしその上司を支えようとするサブリーダー。このサブリーダーは非常に有能で24時間本当に戦いそうな勢いでずっと働いている。そして彼は結衣の元婚約者でもあった。破断になった理由は、両家顔お合わせの時、彼が会場に現れなかったから。家に行くと、過労で倒れていた。そして結衣より仕事が大事だと言った。その時の彼の勤める会社の社長が今の結衣の上司で、その上司がまた理不尽なことを言っている。結衣は変えたかった。会社とはなにか、働くとはどういうことかを伝えたかったがために立ち上がる。

 

結衣は任されたプロジェクトを通して改革をしようと試みる。残業のない空間を作ろうと一つ一つ理由を探る。その姿を見ていると、誰もが今自分の勤める会社のことを考えるのではないだろうかと思った。心療内科に罹っているスタッフ、突然休むスタッフ、タスクを部下に振り自分の得点とする上司。会社の中には残念なことがたくさんある。

 

私にも経験がある。その人の業務内容や所属や立場により、会社での不満は異なる。よって正しい解決方法というのはありそうでなかなか見つからないものだ。例えば業務分担の問題だったり、システムの問題だったり、得意先の問題だったり、内部の何かのボタンを掛け替えることで改善するような問題ばかりではない上にその一つを解決するのに大きな痛みが伴い、また別のところで歪が出来ることだってある。

 

結衣の挑戦は最終的に解決しているのだけれど、すべての企業に結衣のようなスタッフがいるわけでもなく、泣き寝入りの人も多いはずだ。ワークライフバランスとは、それぞれがそれぞれの立場で考えるきっかけとなる良い作品だと思う。コロナのおかげで在宅勤務が注目されるようになった。毎日会社に行かずとも業務が行える。もう少し広がって欲しいなあと思うのだけれど、そう簡単に社会が変わることはないんだろうなあ。