#292 体の芯を整えるようなアーユルヴェーダ本
『アーユルヴェーダが教える せかいいち心地よいこころとからだの磨き方』
アカリ・リッピー著
アーユルヴェーダ式の過ごし方を指南。
家からそう遠くないところにアーユルヴェーダ医院があって、もう一昨年前になるが蕁麻疹の症状が治らなかった時に何度か通ったことがある。本当にありがちなパターンだが、イギリスに行って初めてアロマオイルやハーブに触れ、フラワーレメディーなども試してみた。すべて自然界にある花から得られるものであり、そのうち「オーガニック」という言葉を知るようになり、日常に取り入れるようになった。ドイツやイギリスやフランスなどの西洋の「ハーブ」の知識は割と早い段階で日本にも入って来ていたと思う。今では検定なんかもあるらしく、ビジネスとしてはすでにニッチではないのかもしれない。自然派(むかしはロハスとか言ってましたね)な生活様式を取り入れようと、ヨガの教室にも通ったりもした。
料理にもハーブを使用するようになり、レシピを探しているうちにハーブとスパイスは相性が良いことを知った。スパイスはシナモンから使い始め、お酒も飲めないのにホットワインを作ってみたり、神秘的なスパイスのパワーに魅せられた。スパイスと言えばカレーである。ひよこ豆が好きなのであれこれ見ている時、インドではよく食べる豆類のうちの一つだと知る。
ある日、まだ海外に住んでいた時のことだが、会社にインドからのお客様がいらっしゃった。ものすごくゴージャスな方で、笑顔も素敵で太陽のような方だった。その方が、お土産としてインドの化粧品を下さった。それはKAMAというブランドのもので、とても有名なものらしい。
驚いたのはその香りで、とても濃厚でエネルギッシュな力に溢れていた。社内でいきなりエキゾチックな香りがわっと立ち上がり、そのディープさに圧倒された人が多かったのを覚えている。そしてそのディープさに目を輝かせた数人で仲良く分け、私も運よく頂くことができた。それが初めて本場のアーユルヴェーダと出会った時だったかもしれない。
知識としてはもちろん知っていたし、すでに数冊の本も手にしていたけれど、本格的に試してみようと思ったのは日本に帰ってからだ。やっぱり言葉をストレートに伝えられるという受診者側の都合もあるが、インドやスリランカへ渡り専門知識を身に付けられた先生方に直接診て頂けるというのも大きかった。
アーユルヴェーダは3つのタイプに分けられる。
(上はこちらのサイトから→Ayurveda Mama)
日本語ではヴァータ、ピッタ、カパということが多いらしい。それぞれタイプ別に推奨される食材が異なる。やはりインド発の概念なので、アーユルヴェーダ式の食生活をと思うとカレー度が高すぎて取り入れるには難易度が高い。実際にレシピ本を数冊持ってはいるのだけれど、一度も使ったことがない気がする。
よって、日本人の先生が南アジアで学ばれたアーユルヴェーダの知識をもとに、どのように生活に取り入れておられるのか、など日本で実践しやすい方法を教えて頂くことができ、医院に通って体調もかなり改善された。コロナが始まってからは一度も受診できてはいないのだけれど、必ずまた通いたいと思っている。
アーユルヴェーダについてはちょっと検索すれば膨大な量の記事がヒットする。日本でも軽くブームになっているのかもしれないし、コロナ禍で自宅で試せる健康&美容への関心が高まっているせいか本書も評価数がかなり多かった。しかし、一見詳しいように見える記事でも、いざ取り入れるとなるとハードルが高い。まず、そうする理由がわからないし、それがどのような結果をもたらすのかも曖昧。加えて「ギーを食べろ」ならまだしも「作れ」とか言われてもバター煮つめるとか何それ?な気持ちになるだろう。
本書はそんなギーを食べる前の段階、アーユルヴェーダを取り入れる生活とはいったいどういうものなのか、心持ちの在り方を丁寧に説明してくれている。やはりインドの生活様式なので、インド哲学に通ずるものが多く、簡単にさっとアーユルヴェーダ式美容にチャレンジしたい!とか、痩せたい!とか、プリヤンカ・チョプラみたくなりたい!という人には向いていない。もっと芯からアーユルヴェーダを取り入れる人へのメッセージといったほうがわかりやすいと思う。
著者はIT企業で活躍するも、心の声に従ってスリランカへと旅立つ。スリランカはアーユルヴェーダのメッカ的な土地で、そこで一から学ばれたという大変にガッツのある方だ。今は都内でサロンを開いておられるそうで、このような方のサロンならば絶対に心地よく指導して頂けるに違いない、と思えた。
アーユルヴェーダも心のわだかまりを砕くような、仏教にもつながる信念がある。私はむしろその部分を知らずに表面だけをさらっていたので、この本は非常に深く染み入るような気持ちとなった。いつかきっとお会いしてみたい。