Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#223 大根一本まるっと食べる方法

 『堤鯛之進 包丁録 2』崗田屋愉位置 著

助けた男の子に鯉という名を付け面倒を見る鯛之進。子の親の知らせを聞く。

 

この間読んで面白かった本の2巻目。

 

 料理関連のマンガは料理の手順を学べるので面白い。具体的なレシピも兼ねているマンガもあれば、ざっくりした作り方だけれどどうしても食べたくなってしまうような料理が並ぶ作品もある。この本はどちらかというと後者で、時代背景が江戸ということもあって日本人の好きそうな献立しか出てこない。

 

料理を作るのは北国育ちの浪人で、かまど一つで一汁一菜が並ぶのみ。それなのになぜかとても美味しそうに見えてくる。やっぱり出汁から作るというが魅力なのだ。出汁をとってお味噌汁を作るのが当たり前だった時代はもう遠い昔の話となってしまった。削られた鰹節がビニールパックに入れられて売っているけれど、それすら使わずとも出汁の素がいろいろな形で売られている。

 

出汁が料理の要であることがわかっているだけに、昔ながらのやり方に惹かれるのかもしれない。手軽に作ることではなく、美味しく作るには素材を生かして出汁をとり、余すところなくいただくこと。こういう生活が尊く感じられるのはこの間まだ食べられるのに捨てられてしまう食品廃棄物の多さについての記事を読んだからかもしれない。

 

食べられない時代の話をされても、今の時代に生きる人には何も伝わらないし「無理して食べるより良い」という考えの人もいる。作った側の気持ちになれば「大切にいただかなくては」と思うのだろうか。今は農業の技術も発展し、食品ロスさえなければ十分に国民の胃袋を支えられるのではないだろうか。むしろ私たちは食べ過ぎなのかもしれないし、昔の生活に戻れというわけではないけれど、嗜好品など栄養とは別の観点での食も楽しんでいる。

 

それに比べて江戸の食は添加物もないし、冷蔵庫もないわけだから、その日に買ったものを調理してその日に食べる生活だ。食に集中しているように見えるせいか、鯛之進の料理に対する貪欲な思いに並んで、シンプルながらに滋養のある食事を作りたくなってくる。今回知った林巻大根も作ってみたい。

 

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思えばいまや大根もカットされたものが売られていて葉のついた大根をまるまる一本売ってないことすらある。野菜の皮には滋養があるけれど、食べないことも多いと聞く。食生活の何が正しいのかはわかからないけれど、食べ物を無駄なくいただくということは守っていきたい。「いただきます」と「ごちそうさま」の気持ちを大切に、食べられることへの感謝を忘れないでいたいと思っている。

 

この本、著者名から男性のマンガ家さんかと思っていたが女性なのだそうだ。筆のタッチも力強くて迫力があって面白い。他の作品も読んでみたくなった。