Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#193 主人公が戻ってきたのでシリーズ最後まで読むことにしました

 『髪結い伊三次捕物余話 11』宇江佐真理 著

伊三次家の長男、伊与太は絵のお師匠の元へ戻るもお師匠の病気は進む。

 

いつになくゆったりとした週末を過ごしたのだが、これもきっとおうち時間を満喫できているからだと思う。とはいえ、昨年の1度目の緊急事態宣言時よりも街中には人が出ているらしいとのことなので、「もうこれ以上我慢できない!」という人も多いのだろう。そもそもがインドア派にとっては全く苦も無く過ごせているどころか、出勤の負担が減るだけでも得したような気分だ。一方アウトドア派というか外出が好きな人には苦痛だろうと思う。「家に帰っても寝るだけだから」と住空間を重要視していなかい人にとってもつらいはず。会社のデスクに座っているほうが安心出るという人も少なくないような気がしてくるのだが、ここはやはり自分のことだけではなく周りの安心安全のためにももう少し自粛する方向を選んで欲しいと思う。英国の様子を見ているとワクチン接種できれいさっぱりコロナ禍から解放されるわけではないことがわかる。効かない異変種だって出てくる可能性もある。今は少しでもエッセンシャルワーカーの方々の安全を第一に動きたい。

 

インドアもとい不要不急の外出をしなかったこの冬、書店を訪問することがないので同じような種類の書籍をずっと読む日々が続いている。この髪結い伊三次シリーズも同様で、結局15冊出ているものすべてを読んでしまいそうな勢いだ。

 

9作目あたりから著者の体調不良の様子などが見え隠れし始め、10巻目にはついにその兆候が記された。1年に1冊の文庫が出ているので、徐々に体調を崩し始めておられたのかもしれないなど、本の内容の他にも著者のことに思いが及ぶ。

 

今回の11冊目は本当に嬉しいことに主人公が伊三次一家となっている。一旦芝へ戻った息子の伊与太も師匠の病に一度八丁堀へ戻ってくるし、お吉も元気に家族を支えている。今回は捕物というよりは伊三次への相談事が思わぬお調べになるというものだった。そう言えば一風変わった赴きの話があった。いつもと話の流れやタッチが違うし登場人物の人柄もちょっと違う。大変面白く読んだのだが、あとがきによるとなんとモデルとなる話があったらしい。お詳しい方にはすでに「あの作品に似ているぞ」と指摘されていたとのことだし、著者ご本人もそれを認めている。

 

それは伊三次家の台所を預かるおふさ一家の隣人の話だった。藩が取り消しとなってしまい浪人となった若い夫婦が、武士としての志を忘れずに貧しさの中でも誇りを失わずにいる。お文はお座敷でその元藩の人間に会うのだが、その男は別の藩に職を得ており元同僚へ心を割くことなく暮らしている。腹のたったお文はその後隣家の浪人をどうにかまたお屋敷勤めとなるように尽力する決心をする。話を聞いた伊三次は不破家の妻いなみに相談に行く。そこで解決につながるヒントを得るのだが、話の流れが今までのものよりほんわか温かい感があった。

 

読み進めていると著者の病との葛藤と思われるところが見え隠れする。病気と知っているからそう感じてしまうのかもしれないが、自分がこの世を去ること、この世に残していかざるを得ない愛する人々のこと、著者の心の中にある思いが文章にも表れている。非常に胸が痛むので読むべきかどうか迷ったのだが、やはり最後まで読み終えようと決めた。

 

それにしても読書の傾向が偏っていることがちょっと気になる。まあ、楽しんで読んではいるのだけれど、春からはもう少し違う題材にも挑戦したいと思う。