Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#189 物語が終わりに近づいているようです

 『髪結い伊三次捕物余話 9』宇江佐真理 著

同心となった龍之介はやる気をなくしてしまう。

今日を刻む時計 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
 

 

緊急事態宣言があったので今週から在宅勤務が始まった。在宅勤務、リモートワーク、テレワークなどの言い方があるようだけれど、結局一番使う単語は「在宅勤務」のような気がしている。メールなど文章化する時、漢字で書いた方が少し緊張度が高まるような気がするという些細な理由なのが、ニュースではテレワークやリモートワークが多く使われているようだ。

 

今回は買いだめのようなことも起きていないようだし、去年の春のような混雑は無いようだけれど、日に2,000人以上もの感染者が出るとなると自ずと自衛の念が出てくるような気がした。いつもより静かな日々ではあるが終息までにどのくらいの時間がかかるのだろうか。あっという間に桜の季節がやってきそうだけれど、その頃には明るい世界になっていればと思う。

 

さて、このシリーズも9冊目となった。全部で15巻のシリーズなのだが、9巻目にしていきなり大きな変化があった。今までは1巻ごとに1年が過ぎていた。登場人物も一つ歳を取る。ところが9巻目は読み始めてすぐに謎の登場人物が現れ少し混乱した。読み進めると伊三次とお文の娘であるという。8巻目では二人の子供は伊与太のみでやっと一人で歩き始めるくらいの子供だった。それがなんと絵を学ぶために家を出ているという。よちよち歩きの伊与太がすでに前髪も落として大人になっているとは!

 

9巻目、つまりいきなり10年ぽんと飛んだ世界となっている。なぜ9巻目にして一息に10年も時計の針を進めたのか。巻末の著者によるあとがきによると、このシリーズを書き上げるためとあった。著者は2015年に66歳で他界されている。この巻は2010年7月に発刊されているのだが、すでに体調に異変を感じておられたのだろうか。

 

このシリーズの主人公は伊三次のはずだが(タイトルがそうだから)どんどんと不破の息子の龍之進の話題が中心となってきてしまった。伊三次一家にはお吉という娘ができ、伊三次の姉の家とも良い関係を維持しているので続けて読んでいる読者には一安心というところではあるが、伊三次の働きをもっと見たかった。

 

10年の空白に一体何があったのだろうか。特に不破の家は何かが停滞しているような感さえある。立派な同心になっているだろうと思われたまじめな龍之介は、同心になる時に龍之進と名を改め同期とともに邁進していたはずなのに。それがこの巻ではそろそろ三十路目前というのに人生の波に乗れずにいる。ここからきっと立て直していくだろうと予想できるとは言え、少し残念。もしくは立て直しのために一度落としたということだろうか。

 

手元にはあと1冊残っているだけなのだが、続きを読むかは悩むところ。個人的には伊三次の活躍していた4巻目くらいまでが一番面白かったように思う。