Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#179 ほろ苦いけど美味しいチョコレートを食べた時の感覚に似てるかな

『リュッケ』マイク ヴァイキング 著

ヒュッゲの作者が書く「幸福」。 

 

クリスマスらしいことを全くせずいつも通りの平日を過ごしてしまった。クリスマスになると必ず見たくなるものがある。

 


Merry Christmas Mr Bean | Full Episode | Mr. Bean Official

 

Mr.ビーンのクリスマス。一人でクリスマスを祝う内容なのだけれど笑いとともに心に染みるところもある。

 

今日くらいは時代小説はやめておこうと表紙の美しい本からこれを選んだ。タイトルのLykkeはリュッケと読み、デンマーク語で「幸せ」という意味だそうだ。この本は前作のヒュッゲと一緒に購入していたもの。

 

2冊とも装丁がとても美しい。リュッケは暖色が利いていて心も温かくなってくるようなデザインだった。

 

デンマークは幸せな国というデータがある。国民が日々の生活に満足し、幸せを感じている人が世界で一番多いということだ。前作ではそれはヒュッゲという「心地よさ」を追求する心にあるとのことだったが、今回のリュッケではもっと掘り下げて「幸せ」を感じられる理由を追求している。

 

幸せな国のイメージは個人的にはデンマークより真っ先にブータンが浮かぶ。他にもほほ笑みの国といえばタイだし、世界で一番天国に近い島はニューカレドニア。この本に掲載されている調査によれば、北欧諸国がトップにあがっている。欲しいものが手に入り、家も仕事もあり医療費だってちゃんと払える。お金で解決できることが幸せと言えるのか?という質問は今や愚問で「NO」であることは多くの人が知っていること。もし金銭的に裕福な国に住むことが幸せだというのなら、アメリカや中国の人はとてつもなく幸せということになる。

 

参考になった言葉があった。

 

人生を「長い目」で見る

 

幸せについて研究するうえで、まず知っていただきたいのは、「今この瞬間の幸せ」と、「全体的に見た幸せ」を区別することです。私たちの研究所では、前者を「感情的側面」、後者を「認知的側面」と呼んでいます。

 

感情的側面は、人々が日常的に一瞬一瞬経験する感情を指します。昨日をふりかえってみたとき、落ちこんだり、悲しかったり、不安になったり、クヨクヨしていたかどうか。あるいは、笑いはあったか、幸せを感じたか、愛されていると感じたか。

 

一方、認知的側面を考えるときは、一歩下がって大きく人生そのものを見つめなければなりません。自分の人生全体にどれだけ満足しているか。全体的に見てどれだけ幸せか。最高の人生と最低の人生を考えてみたとき、自分は今どのあたりにいると思うか。

 

(中略)

当然のことながら、感情的側面と認知的側面はつながりを持っており、ある程度重複する部分もあります。毎日がポジティブな感情に満たされていれば、その人はおそらく、全体的な人生の満足度においても高いレベルにいると考えられます。

 

しかし、感情的側面と認知的側面はイコールではありません。ときに最悪の気分で朝を迎えたとしても、全体的に見ればすばらしい人生だということはありえます。

 

この文章を読んで昔のことを思い出した。今まで数々の「ああ、もうダメだ。人生終わった!」と思うようなことは、感情的側面では所謂「挫折」と言えるものだった。今、時が流れ改めてその当時のことを思い出してみると、「ターニングポイント」になっている。あの出来事があったからこそ今の私があるのです、と言える事件の数々。人間は失敗から学ぶものであり、そうやって一歩一歩育てられて行くのだという考えを忘れないように認知的側面で眼の前の「ダメだ!」を見ていかなくてはならない。

 

人によって幸せの基準は異なるし、長く一緒に暮らす家族でさえも幸せに感じる対象や時間の過ごし方は異なっている。この本のメッセージは上の抜粋部分が核だと思われた。幸せよりも気分を害するような出来事をどう判断するか、その感覚がデンマークなど北欧の人は上手にプラスに変える思考回路を持っているということのようだ。

 

例えばボランティアだったり、コミュニティー作りだったり、生活を大切にするライフスタイルが思考回路をポジティブにするのかもしれない。一方でストレスや競争社会では幸せは訪れない。例として彼の国の話が何度も出てくるが反面教師として非常にわかりやすかった。

 

デンマーク生まれでノルウェーで暮らしたアクセル・サンデモーセという小説家の作品がもととなった「ヤンテの掟」というものをスカンジナビアの人は心に持っているらしい。謙虚とは、を掟としたような内容なので忘れないように記しておきたい。

 

ヤンテの掟

 

自分は他人よりも重要な人物であると思ってはならない

 

自分は他人よりも優れていると思ってはならない

 

自分が他人から気にかけてもらえると考えてはならない

 

自分のことを特別な存在だと思ってはならない

 

自分は他人よりも知識が深いと思ってはならない

 

自分は他人よりもかしこい人間であると思ってはならない

 

自分はなにかに秀でていると思ってはならない

 

自分は他人よりも善良であると考えてはならない

 

他人のことを笑ってはならない

 

自分が他人になにかを教えられると思ってはならない

 

自分は自分、人は人。自分でちゃんと「幸せ」を感じることを北欧の人から学ぶことができた。Merry Christmas.