Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#142 冷静になりたい時にも時代小説を!

 『はむ・はたる』西條奈加 著

江戸には親のない子が多かった。勝平は15人もの親なし子をまとめている。

はむ・はたる (光文社文庫)

はむ・はたる (光文社文庫)

 

 

この頃どうも頭の中がばらばらというか、散漫というか、あれこれ考えが飛びすぎてなんだか落ち着かない。作業するデスク周りを片付けてみたり、鉄瓶で沸かしたお湯でお気に入りのコーヒーを挽いておいしく入れてみたりするのだけれど、心は飛び飛び。

 

今一番気がかりなのはパソコンのことで、小さい画面で作業するのに疲れてきてしまい新しく購入したいと思っているのだけれど、いざ気に入ったデザインのものは機能に問題があったり、やっぱりビジネスシーンでも使うからOffice搭載がいいんだけれど検索しているとあっと言う間に一日が過ぎている。ぼんやりしながらNetflixでドラマを見るのだけれど、それすらところどころ意識が途切れている。やれ、どうしたものか。

 

まあ、そんな時こそ気分転換とやっぱり時代小説に救いを求めた。この作品は江戸の天保の時代、親に売られたり、亡くしてしまったり、はぐれてしまったりと親との縁がぷっつりと途絶えてしまった子供たちが多くいたらしい。そもそも江戸時代の奉公制度には毎度ながら驚くのだけれど、10歳ちょっと超えたあたりから奉公先に出て手に職をつけたり、行儀を見習ったりとまだまだ小学生のうちから日夜働くだなんて今なら労働力搾取とか未成年労働で大変なことになってしまう。結婚も早いし、「お年頃」が16歳とか、大年増が25歳とか、江戸時代は子供時代を満喫できる時間が短かったんだなと思う。

 

親のいない子供たちはどうにかして食べていかなくてはいけない。悪い大人の餌食となって日に一度細々と食べ物にありついたとしても、体は持たないだろう。大人の庇護下にない子供たちは自力で食べ物を手に入れた。子供のできることなど知れていて、大方盗みで生計を立てるしかなかっただろう。この小説の子供たちは最初はそんな生活をしていた。ところがリーダー格の勝平は、自分もまだまだ10歳を少し超えたばかりだというのに、路頭に迷う子供の面倒まで見ている。しかも15人ほどの子供を従えて商売もしているという。

 

勝平が商売ができるようになったのは、侍である長谷部一家との出会いがあってのことだった。長谷部家では生計の足しにと稲荷鮨を売っている。長谷部家のおばあさんは勝平たちの身元引受人として彼らの面倒も見ながら、作った稲荷鮨を売る仕事を勝平にまかせている。この武家のおばあさんがとても立派で、子供たちに読み書きや言葉遣いなど大人になってもこまらない知識を教えている。とても怖いので勝平たちはおばあさんの前では何も言えない。それがまたかわいいのだが、おばあさんも愛があってのことだと感じる場面が多々ありほろっと来る。

 

子供が主人公ではあるけれど、捕り物や謎解きの話も多い。勝平は大人も耳を貸すほどに賢いし、周りの大人たちも勝平やその仲間たちを愛しつつ、育てつつ、かつ一人前として扱っているところに「人情」が溢れている。

 

このお話、先回読んだ本の主人公が出てきた。与力の高安門佑だ。

 


高安門佑が長谷部家の次男の征と関わりがあり、この作品でも与力として活躍している。ちょっとした小さなことでも作品がつながっていることに気が付くとなんだか嬉しい。

 

時代小説で頭の中のもやもやも少しすっきり。今は団子かおはぎが食べたい気分。