Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#143 秋のうちに猛スピードで時代小説を読みまくる予定です

 『紫紺のつばめ 髪結い伊三次捕物余話(2)』宇江佐真理 著

髪結い伊三次が捕り物をやめた?

 

紫紺のつばめ (文春文庫)

紫紺のつばめ (文春文庫)

 

 

不思議なことに寒さというか気温によって読みたいものが変わってくる。毎年冬になるとどうしても児童文学が読みたくなり、読まずにはいられなくなる。読み始めは毎回決まっていて、一番好きな小説といっても過言ではないEdith Nesbitの『砂の妖精』を読んでいる。この本は今までいくつもの翻訳が出ているけれど、一番気に入っているのは福音館書店の文庫版のもの。

 

砂の妖精 (福音館文庫 古典童話)

砂の妖精 (福音館文庫 古典童話)

 

 

その時の気分によっては英語のものも読むけれどこちらをKindleで読む時はかなりかなりテンションがあがる。

 

Five Children and It (English Edition)

Five Children and It (English Edition)

 

 

これを読んだらケストナーハリーポッターが控えているので、12月はぬくぬくしながらツリーの前で童心に帰るのが毎年のお決まりだ。

 

そろそろそんな時期が近くなるな、と買い置いてある小説をまず先に読むことにした。明日までの文藝春秋のポイント50%キャンペーンの作品から読みこんでいるのだけれど、伊三次の人柄が気に入ってしまい続けて2冊目を読むことにした。

 

ところで時代小説はどうして巻数を数字で出してくれないのだろう。一冊読み終わり次を読もうという時、いったんアマゾンのサイトに戻り巻数を確認する作業が面倒だ。巻数で思い出したけれど、アジアの音楽市場も同じ現象があるらしく、アルバムは名前ではなく第1集、第2集とナンバリングされていてわかりやすいのだそうだ。

 

2巻目ではなんと伊三次が同心の御用聞きの仕事から離れてしまうという事態がおきる。義理人情の時代ゆえのこと、大きな見入りもなく信頼一本やりで人と人のつながりが縛られる。伊三次は同心の不破のもとで働いていたが、濡れ衣に合うも伊三次の側に立たない不破に「どうせ小者はこんなものだ」と不破への信頼や情恩がぷつりと切れる。心の通わない人のもとで働く謂れはない。伊三次は不破から離れることを決意する。

 

その上、恋人で辰巳芸者の文吉もかわいがってもらった旦那衆の息子からの支援を受け、なおさら伊三次の心から自信をそぐ。家を修繕することも、自力で店を持つことも儘ならない伊三次には辛いできごとであった。大きな仲たがいが2つもあるこの作品は心にずしりと重くのしかかるものがある。

 

巻末に文庫本にあたっての著者のコメントがあるのだが、その中に物語の中の出来事が著者の実生活の中で実際に見聞きしたことがヒントになっているということが書いてあった。そのストーリーはとてもとても切ない話で涙ながらに読んだのだが、これが実際にあったことと知りなおさら胸に迫りくるものがあった。美しくて儚い。

 

このまま続きも順に読んでいくつもりだけれど、冬の児童文学の誘いがひたひたと近づいているので大急ぎで読破していかなくては。