Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#106 kindle版半額セールだったので目黒が舞台の時代小説を読んでみた

 『居酒屋お夏』岡本さとる 著

江戸は目黒不動の近くにある小さな居酒屋。口の悪い婆ぁと料理人が営む庶民の居酒屋。

居酒屋お夏 (幻冬舎時代小説文庫)

居酒屋お夏 (幻冬舎時代小説文庫)

 

 

なんとなくAmazonを徘徊していたら半額になっていた本書を発見。タイトルに居酒屋とあることから料理の話であればと購入してみる。シリーズもので「居酒屋お夏」は11巻出ているらしい。ひとまず1巻目を読んで様子を見てみよう。

 

時代小説は①料理を作ることをテーマにするものと②物語の舞台が食べ物に関わる場所であること、が多いようだ。この本も①ではなく②にあたる方で主人公のお夏の営む店が居酒屋ということから、少しだけ料理の話は出てくるけれどもメニュー程度の内容である。

 

ストーリーは年齢不詳で口の悪い婆ぁことお夏が、料理人の清次とともに小さな居酒屋を営んでいるのだが、舞台が目黒ということもありかなり庶民派である。日本橋であれば商家のお坊ちゃまなどが出てくるのだろうけれど、この本はごろつきは出てきても金持ちはほぼ出てこない。日暮しの食べるに困るような生活をする人々の中で、お夏は今でいうところの毒舌で愛嬌のない店主なのだが、その言葉に込められている温かさを知る地元の人が頼りにする店である。

 

目黒のほうが馴染みがあるのでそれが楽しくてあっという間に読んでしまった。ストーリーとしてはばったばったと悪を成敗してくれるような人情物なのだが、時代劇のようなテンポの良さもあり大変読みやすい。すっと入ってくる文章なので娯楽としておすすめかもしれない。

 

お夏の正体はまだ1巻目ではわからないのだが、きっと何か秘められたものがあるに違いない。婆なのかまだまだ若いのかすら、口が悪く誰にでも強気な婆という設定なのだがこれが11巻ずっと続くものなのであれば他に読みたい本もあることだし、続編の購入を躊躇している。半額という魅力的なキーワードに抗うべきか、流れに乗るべきか悩むところだ。