Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#163 山菜が食べたい

『おせん 1』きくち正太 著

創業200年という老舗料亭の一升庵。女将の仙のお手並みやいかに。 

おせん(1) (イブニングコミックス)

おせん(1) (イブニングコミックス)

 

 

読書の傾向というか、くせというか、一度そのジャンルにハマってしまうとそこに没頭してしまい、立て続けに似た傾向のものを読みたくなってしまう。新しいKindleが来るまでの間と思いつつ、どうやらマンガモードに突入してしまったようであれこれ読みたくなってしまった。

 

題材は料理のものが良いので、やっぱりここは「あたりまえのぜひたく。」と同じ作者のものを読みたいと思い、まずは古い順にとこちらの作品の1巻目を購入してみた。

 

Wikipediaによると、この作品はドラマ化されたものの問題があったらしい。しかもドラマ版は原作を改悪したとの意見もちらほらあった。ドラマ化は知らなかったが、1巻目を読んだだけでも映像化すればきっと良い作品になるのに!と思わずにはいられない内容だ。しかも全16巻と読む楽しみが続きそうなのも良い。

 

舞台は料亭で、時代は現代。なのになぜか主人公のおせんこと半田仙は「わっち」と芸者言葉で話をしている。おせんは200年続く一升庵の女将で、謎めいた魅力のある人物だ。嗜みと言われることはほぼ身につけており、履歴書だけ見ればどこぞのお嬢様に見えるのだが、実際には食に対する造詣深い才能豊かな女性である。

 

こんな人である。

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1巻目の登場人物はこの一升庵で働く人々と、一升庵を取材したいと考えるテレビ局のスタッフ、そして一升庵の従業員の知人が営む飲食店のスタッフである。食べ物は真鱈と山菜がメインなのだが、著者の故郷である秋田の話が出てきたあたりから、「ああ、これ絶対おいしいやつだ」と思わせるものがあった。

 

昨日読んでいた『あたりまえのぜひたく。 ─外食気分は昭和喫茶で。』に山菜の話があったので、尚更食べたい感が増してくる。和食をここまで美味しそうに見せるポイントは、地産地消の姿を見せることにあるのかなと思う。その土地の食材を最も美味しく調理するすべはその土地の人が最も深く知っている。一番美味しく食べられる時期や調理法だけではなく、体が求める食べ方にも詳しいはずだ。最近は物流や加工技術の発達で地消エリアが拡大した。お金さえかければ秋田から東京までたった数時間で食材が届くであろう。ただやはり食べ物は鮮度が一番の調味料とも言えるので徒歩で移動できるエリアという意味での地産地消は美味しく食べる基本なのだとは思う。しかし、このおせんのように収穫後数時間で届いたものをベストな形で調理するすべを知っているものにとっては、時代の発達は味方となるだろう。

 

『あたりまえのぜひたく。』との違いといえば、まあ1巻目ということもあるのかもしれないが、料理以外の設定に関するページが多い。あと料理も食べる側からの視線が多く、調理のシーンはそれほど多くない。下準備などもちらっとしか出てこない。

 

山菜については宅配で鮮度の良いものが送られてきました、ではなくて実際に秋田の山に行くというダイナミックさが面白かった。わらびやタラの芽くらいは知っているが、初めて聞く山菜の名前がいくつかあって春が待ち遠しくなる。

 

雪国の春は東京よりも遅い。山の雪が解け始める頃に一斉に芽吹く山の幸は地産地消の最たるものではないだろうか。本の中でも描かれているが都会で食べれば数万円になるものが、無数に山に生えている。

 

この本、少し時間をかけて読んでいきたいと思う。料理がテーマの本は心が温まるのもまた魅力。