Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#088 懐かしい和菓子「すあま」

『深川二幸堂 菓子こよみ 二』 知野みさき 著

光太郎と孝次郎が営む和菓子屋、2冊目。 

深川二幸堂 菓子こよみ<二> (だいわ文庫)

深川二幸堂 菓子こよみ<二> (だいわ文庫)

 

 

時代小説はなんとも不思議な魅力があるのだが、おそらく江戸のなんとも言えない温かさが癒やしになっているようなところがあることに気がついた。義理人情なんて今やなかなかお見受けしない風習となっている気がする。どこか殺伐とした個人主義の中で仕事していると江戸のほのかな優しさが心にしみる。

 

ということで、2冊目。1冊目が面白く、続きがどうしても気になってしまい一気に読んだ。

 

昔祖母の意向で少しだけ茶道を学んだというか、お茶を飲みに行っていただけというか、あまりに身につかなかったけれどそれでも週に一度お茶を習いに行っていた。先生は祖母の女学校時代の友人で品のある美しい方だった。昭和を生きた祖母の世代はまだまだ日本の伝統文化に触れる機会が多く、我が家でも旧暦の祝い事など季節感を感じる大切な行事として執り行っていた。

 

茶道では季節感に合わせた上菓子が出され、毎回先生がお茶やお菓子の由来などを説明して下さった。まだその頃はよくわからずにただ口にしていただけだが、大人になりなんと貴重な時間を過ごさせてもらったのだろうと思うようになった。たった数年だがあの時に接したほんの一握りの経験が今では大切な宝となっている。お茶を学んでいなかったら、こんなにも和菓子に興味はなかっただろう。日本文化にも関心もつことなく過ごしているに違いない。京都でお茶屋さんや和菓子屋さんに行き、「知っている」ということがどれだけ文化を慈しむ上で大切なことか実体験したこともあり、百聞は一見にしかず、経験することが何よりも大切だと信じるようになった。

 

さて、この2冊目だが相変わらず餡のお菓子が多いものの、気になるものはいくつもあった。懐かしかったのが「すあま」だ。孝次郎が菓子作りを学んだ草笛屋では正月に「すあま」を出しているとのこと。子供の頃、あのお餅とは違う柔らかさと甘さが大好きだった。我が屋では正月だけではなく、春に好んで食べていた。桜餅(私の育った地域では道明寺を桜餅と呼んでいる)と一緒に「すあま」も必ず準備されていて、ほうじ茶と一緒に楽しんだものだ。草笛屋のすあまも甘く美味しいものらしい。シンプルなものほど作るのは難しいらしい。見た目といい、味といい、食感といい、すあまは幸せの塊のようなお菓子だと思う。

 

和菓子屋の小説をもう少し読みたいと思って探してみたら、3冊目が出ていることを知った。洋菓子よりも和菓子のほうが想像しやすいせいだろうか。食べたい気持ちが止まらない。