『それぞれの陽だまり 日本橋牡丹堂 菓子ばなし㈤』中島久枝 著
新人物登場!牡丹堂に新しい風が吹く。
光文社のAmazonセールの時に5巻目までを大人買いし、その最後の1冊となった。5巻目から新しい流れが出始めたので、大筋に少し動きが出た感じがする。
小萩はこれから和菓子の作り手を目指すのだろうか。それともどんな作品を作るのかを考える、今でいうところのデザイナーやフードコーディネーターのような役割になるんだろうか。そもそも昔は和菓子に限らず女性の作り手は多くはなかっただろうと思う。そもそも女主人の料理屋というのも稀だったようなので、和菓子でも同様であっただろう。女性が料理人として活躍しにくかったというのは、おそらく体力の問題ではないだろうか。大きな釜に火を沸かし餡を練るような作業は思った以上の重労働だ。機械があったわけでもないし、すべてが手作業。しかも冷蔵庫が無い。料理は力仕事であるゆえ、女性が活躍しにくい場だったのではないだろうか。
そこは10代の娘に大鍋をつかみ、何キロもの豆を背負い、砂糖を抱え、早朝から何種類もの餡を作る作業を軸としたストーリーはちょっと無理があるだろうなと思っていたので、餡ではなく案を練る作業というのは納得がいく流れだと思う。
5巻目から牡丹堂のセカンドジェネレーション時代がスタートする感がある。理由はいくつかあって、①悪役が表舞台に顔を出し始め、小萩と対峙するようになったこと、②新人物が登場し、牡丹堂内の人間関係のバランスが少しだけ変わりつつあるから、③牡丹堂の一粒種の幹太が和菓子作りに集中し始め、店の仕事での役割が出始めているから、④小萩の口調が変わってきたから、である。あと殊更お福がもう歳だという話題も事欠かない。
ということで、小萩は和菓子プロデュースのような仕事がメインとなるんだろうな、ということがわかった5巻目である。読み終わり、Kindleを閉じようとしたら6巻目のおすすめが出てきたので、とりあえず読んでみようかと購入したので牡丹堂のお話は明日までまだ続く。
ところで、取り寄せていた大福が届いた。やっぱり大福はいいなと思う。しっとりこいあんも、がっちり粒あんも、ほんのり白あんも、どれも心がほっとする味だった。