Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#095 時代小説版ラノベだね

 『ふたたびの虹 日本橋牡丹堂 菓子ばなし㈢』 中島久枝 著

日本橋に戻った小萩、牡丹堂の一員として活躍。

 

引き続きの牡丹堂。鎌倉出身の小萩が母方の遠縁で和菓子屋を営む「牡丹堂」こと二十一屋で修業をするというお話。

 

今回は小萩の和菓子屋での役割が見えてくるところがストーリーの軸となっている。牡丹堂の職人たちは絵で示されたアイデアを実現させるのは得意ではあるが、新しいアイデアを生むことをは苦手なようだ。

 

牡丹堂の一粒種である息子の幹太は手先が器用でアイデアも豊富。小萩とも気が合うようで、あれこれと新しいアイデアを練っていく。今回は愛妻に先立たれたご隠居に元気を出してもらうためのお菓子を作るというお話が中心となり、小萩のキャラクターも少しわかりやすくなってきた。

 

3冊目まで読んで、やっと牡丹堂のキャラクターも想像できるようになった。相変わらず言葉の選び方に違和感を感じるところもあるのだが、読んでいるうちにこの小説は「時代小説界のラノベ」だと気が付いてから、すんなり読めるようになった。そうだ。これはラノベなんだ。

 

個人的な趣味の問題ではあるが、江戸時代が舞台となっている小説を読む時、どうしても江戸の文化を余すところ味わいたいという気持ちが強くある。長屋の姿が想像できたり、日本橋の喧騒や大川あたりをそぞろ歩く人々の姿、両国や深川の生き生きとした日々など、話の筋を読むだけではなく心に浮かべながら読み続けたい。現代に居ながらにして、江戸に身を置いているかのような臨場感を味わいたい。普段から江戸の文化に関する書籍もよく読む。江戸が舞台というのはファンタジーの最たるもので、余すところなく楽しみたいという人は多いと思う。

 

だから私は言葉にも自ずと敏感になってしまうのかもしれない。時代小説にふさわしいと思えない単語が一つでも出てくると、あっという間に現実に引き戻され、二度と小説の世界に戻れない気分になる。そうするとなかなかストーリーを楽しめず、あら捜しをする読者になってしまう気がしてより一層ストーリーにのめりこめない。この本も2巻目までそんな気持ちで読んでいた。江戸にひっそり潜り込んで日本橋の牡丹堂の暖簾をくぐる気分になれずにいたが、「ラノベ」と思った瞬間、江戸舞台のマンガを読んでいる気分になれた。

 

この3冊目の良いところは、読んでいてものすごく大福が食べたくなること。餡のおいしさを味わえるお菓子といえば、おはぎ、大福、たいやきが3強だと思っているのだが、今回は餡の描写も豊かで3冊目にしてやっと和菓子食べたい感が強まった。あと数冊残っているので読み続けよう!