Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#060 お料理にフルーツを使うレシピが多いけど、本当にファンタスティックなハーモニーなんだろうか

 『からだにおいしいフルーツの便利帳』 三浦正幸 監修

 

からだにおいしいフルーツの便利帳 (便利帳シリーズ)

からだにおいしいフルーツの便利帳 (便利帳シリーズ)

  • 発売日: 2012/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 仕事絡みでちょっと調べたい事があったので購入してみたのだが、なかなか面白かった。海外に行くと見たこともないようなフルーツがたくさんあり、食べるのを躊躇させるような身なりの強者すらある。日本でも栽培している慣れ親しんだはずのものも、場所を変えると色や形がすっかり変わってしまって驚いてしまうことも多い。「はじめまして」のはずだけれど、食べてやっぱり「ああ、ご親戚筋の方ですね」と日本の味を思い出させる。

 

今回知りたかったのは南方系フルーツの類だったのだが、そもそも品種の多いものだったのでターゲットとしていたものは残念ながら掲載されてはいなかった。しかし基本として得るべき情報は多く実りある一冊だった。

 

それにしてもおそるべしはリンゴと梨。それぞれ巻頭で9ページずつ与えられてこれでもかと魅力を語ってくる。私はめっぽう蜜たっぷりなリンゴの映像に弱く、テレビで見たり雑誌で見たり、とにかく一瞬でも目にはいると絶対に食べずにはいられなくなる。この本はそのあたりは良心的で美しいリンゴたちのカット姿が掲載されているので安心なのだが、それでも「ああ、この前飲んだリンゴジュースはこの品種か」などと思い当たるものがあると、やっぱりリンゴの魅力に抗えない。

 

そもそも北海道から沖縄まで、果物類を栽培していない地域はあるのだろうか。「うちの実家のあたりは〇〇を作っていて」「私の友人の家が△△農家で」といった話もよく耳にするので、きっと何等かのものを作っているに違いない。そういう意味では日本人には絶対なじみがあり、楽しめる要素の多いフルーツ本で確かに便利帳。

 

不平を言えば、ベリー系の項目をもう少し増やして頂きたい。ブルーベリー、クランベリーラズベリーブラックベリーで終わりというのは残念すぎる。そしてジャムになっているようなフルーツについても掲載して頂きたい。大好物のルバーブは恐らく野菜の類とは思うが、柑橘類ももう少しあってもいいかなーと思う。ところで柑橘系といえば、みかんの項目は1ページで終わるが、タンゴールというところに見知った姿があった。「あれ、これみかんじゃないんだ!」と新たなる発見。

 

海外のレシピ本を読んでいると、肉料理にフルーツ系のソースを添えることが多い。レシピ本を読み「作ってみたい」という気持ちは生まれども、今すぐではなく「いつか」作りたいとなるレシピもあれば、「よし、作ろう!」と実際に腰を上げて材料を調達に行き、キッチンに立つべく誘導してくるレシピもある。フルーツ系ソースのレシピは私にとっては前者の類で、味の想像がつかないものはなかなか手がでない。

 

この本はフルーツを使ったレシピも紹介されているのだが、デザート風なら「あ、ステキ!」と次の週末作ったろ!くらいの気分になれるのだが、おかずというかご飯となると全く食指が動かなかった。美しいお写真すらあるのに、なぜ心が動かないのか。「焼きリンゴ」はシナモンの効かせ方やバターのブランドについてまで頭の中でさっと計算が行くというのに、「りんごと豚肉のソテー」となると速攻で次のページをめくっている不思議。お料理に使うフルーツレシピ、苦手意識を持っているだけかもしれないけれど、本当に美味しいと思えるものを食べてみようと決心した。良いレストランを探してみなくては。

 

ところで昨今日本の農業分野において、日本品種の海外での無断栽培のニュースが後を絶たない。私が知る限りでも、いちご、ぶどう、米、さつまいも、りんご、みかん等がある。農作物の収穫は通常年に1度だけ。開発に携わる方々は、年に1度の収穫状況から判断し改良を加えたりしているわけで、実験室で日に何度も次々とデータを採取できる類のものではないはずだ。品種改良はもとより何年にも渡る壮大なプロジェクトのはず。時には社会人人生のすべてをかけたようなプロジェクトを断念せざるを得ないこともあるだろう。種を買うのは一瞬。その一粒にかけられた重みが忘れられているような気がしてならない。品種改良は日本の大切な知的財産だと思うのだが...。まず何よりも、私たちが地産地消を目指すべく美味しく日本の大地の恵みを余すところなく頂くようにしなくてはならないだろう。

 

ルバーブのジャム、そろそろ買いに行かねば。お気に入りはChristine Ferber.

 

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