Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#019 凛とした美しさを!

私の人生に全く縁のない爵位。イギリスの場合、上から順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士となるのは知識として知ってはいます。(詳しくはこちらをどうぞ→

 

貴族については今でも制度として残っている国は多くはないと思います。王政自体が減っていますしね。日本も昔の公家や華族の制度は廃止されましたが、元宮家の方々など、制度に則す立場ではなくとも高貴なお家柄を保たれる方は多くいらっしゃると思います。

 

フランスも今では制度としては保証されているわけではありませんが、上流階級は存在しているんだそうです。ディナーパーティーに呼ばれることなどまず!ありませんが、でもお食事のルールやお洋服のTPOのルールなど、欧米の方に接する時にはやっぱり郷に入っては郷に従えで相手方に失礼にならないように気を付けたい。特に私はフランス女性のライフスタイルから学びやヒントを得ることが多いので、そんなフランス伯爵家のエレガンスを感じられる一冊を読んでみました。 表紙がまたとても華やかです。

フランス伯爵夫人に学ぶ 美しく、上質に暮らす45のルール

フランス伯爵夫人に学ぶ 美しく、上質に暮らす45のルール

 

いつも思っていたことですが、「欧米」って言葉は文化に関してはやっぱり貴族文化のあるヨーロッパと移民の国アメリカではひとくくりにはできませんね。イギリスのハリー王子がアメリカ人の女性とご結婚されましたが昨今王室から離脱されました。言葉が通じるとはいえ、アメリカ人がイギリスで暮らすとちょっと窮屈に感じるという話を聞いたことがあります。ライフスタイルの中に潜む見えない決まり事が鬱陶しく感じられるんだそうです。例えばお洋服のTPOとか。一般生活でも違いがあるというのに、王室ともなれば立場の差や公式行事など守るべきことが多いはず。そりゃあ脱出したくなるだろうなと思います。

 

この本を読んでいると、そんなヨーロッパ貴族の「当たり前」の一つ一つが理にかなったことに思えました。というより、昔の日本もそうだよね!とむしろヨーロッパとのつながりのようなものを感じたりも。きっとそれは私たちには皇室があり、かつては高貴な方々がそれぞれの文化を維持しておられた背景があるからかもしれません。

 

例えば着物の着方や帯の結び方などはフランスの洋装のTPOにも類似した習慣があります。暑いからといって8月のお茶会に浴衣で出かける人はいません。着物にコンバース園遊会には行きません。それは礼儀を重んじる文化があるからであって、自分がかっこよく見えればよい!というのではなく、招待して下さった方への配慮や、その集まりの趣旨や、集まる方とのバランスなどを考えた上で着るものを準備します。私たち日本人もヨーロッパの「礼儀の文化」だと思えば、伯爵夫人のおっしゃる洋服のマナーも納得できました。ハリー王子の奥様はその辺をキャッチできずにいたために、居心地の悪い思いをしたのかも。

 

武士は食わねど高楊枝とは言いますが、フランスの貴族も今は制度として残されているわけではないので国が何等かの保証をしてくれることはありません。しかもフランスの場合は貴族の数も3000近くあるそうですから、現在までその富を維持できる方は少ないと思います。働いている方もいらっしゃるでしょうし、生きるために私財を手放し家柄を証明できるものは何一つ手元に残っていないという方もいらっしゃるでしょう。生活は庶民と変わらずとも自分の出自に誇りを持ち、伝統を受け次ぐ心や気高くあることを大切にしておられるのも日本の武士のようでかえって身近に感じてきました。

 

日本のみならず東洋文化ってどうも若さに重きを置きすぎな気がすることがあるよね、と指摘されたことがあります。メイクが特にそうだ!と。あとおばあさんになったら急におばあさんになる、と。で、お子さんもいる結構な年齢なのに話す内容のバリエーションが少ない、と。メイクは納得する部分もあるけど、話す内容のバリエーションは語学力の問題もあるんだよおお!と強く強く伝えたかったのですが、確かに私もいつもひっそり座って終わること多いんですよね…。何を話していいのかわからないんだもの。この本を読んで、成熟した大人とはどうあるべきか、今後の指標をもらいました。

 

確かに若気の至りが許されるのって20代中盤くらいまでですよね。そう考えると、一生のうち人としてどうあるべきか、どう輝くべきか、どう人生を楽しむかっていう時期は成熟した大人であるシーズンなわけですよね。どうせならエレガントに生きていきたい!

 

今回一番学びとなったのは、最後に出てくるマダムの姿勢の話です。夏のバカンスで背中が大きく開いた水着をお召しになった伯爵夫人の妹さん、背中に大きな皺があったんだそうです。それは胸を張って生きてきた証拠。背中に皺が寄るほどにどんな時も胸を張って姿勢を崩さずにおられた。生き方が背中に出ている。美しいです。

 

伯爵夫人の生活、きりりと帯を締めた凛とした大和撫子にも共通する部分が多かった。フランスを日本に置き換えると、もっともっと理解が深まると思えた一冊でした。